2011 Fiscal Year Annual Research Report
異種接合制御と新チャネル構造による次世代インバータ用GaNトランジスタ
Project/Area Number |
10J01711
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大井 幸多 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | AlGaN/GaN HEMT / 多重台形チャネル構造 / 電流コラプス |
Research Abstract |
GaNトランジスタのインバータ応用に向けては、電流コラプスが課題の一つとしてあげられる。電流コラプスは、実動作において損失の増大や信頼性の低下を招くため、その評価ならびに抑制が不可欠である。我々は以前より、ゲート直下のみに周期的溝構造を形成した多重台形チャネル(MMC)構造を提案している。本研究では、多重台形チャネルHEMTと一般的なプレーナ型HEMTについて、オフストレス印加前後のドレイン電流電圧測定による電流コラプスの評価をおこなった。その結果、多重台形チャネルHEMTはプレーナ型HEMTと比較してオフストレス印加による電流減少が少なく、耐電流コラプス性を持つことがわかった。電流コラプスの要因としては、オフストレス印加によってゲート電極端近傍のAIGaN表面準位に電子が捕獲され、その直下の2DEG密度が減少することによるアクセス抵抗の増加があげられる。そこで、簡単な等価回路式を用いてオフストレス印加前後のドレイン電流電圧特性のフィッティングをプレーナ型HEMTについておこない、アクセス抵抗の変化量を計算した。プレーナ型HEMTでは、チャネル抵抗に対して、オフストレスによるドレインアクセス抵抗の増加量が非常に高い。この抵抗差から、プレーナ型HEMTでは顕著な電流コラプスが観測されたと思われる。ここで、MMC HEMTのゲート領域に着目すると、周期的溝構造はゲート直下のみに形成されており、アクセス領域についてはプレーナ型HEMTと同様のレイアウトとなる。このことから、MMC HEMTにおいても、オフストレスによるアクセス抵抗の増加はプレーナ型HEMTと同等と考えられる。今回評価したMMC HEMTの細線幅は65nmと非常に細く、個々のチャネル抵抗は数kΩと見積もられる。この抵抗値は、オフストレス印加によるドレインアクセス抵抗の増加量に比べ非常に大きい。この抵抗差から、MMC構造はアクセス抵抗の変化に影響を受けにくい構造であり、結果として、プレーナ構造と比較して耐電流コラプス性を示したと推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GaNトランジスタのインバータ応用には、電流コラプスという信頼性・動作不安定性の課題があるが、本研究で提案している多重台形チャネル構造は耐電流コラプス性を示すことが明らかとなった。この点は、研究課題として掲げる次世代インバータ用GaNトランジスタに向けて、有利な点である。
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Strategy for Future Research Activity |
多重台形チャネル構造は周期的溝構造を形成するため電流経路が制限され、電流値が小さいという不利な点を抱えているが、電流コラプスの面で非常に有利であるという点が示されれば、インバータ応用に一歩近づく。そのためには、本研究で報告した多重台形チャネル構造における耐電流コラプス性について、より詳細な現象機構の解明が必要である。具体的には、ゲート領域のレイアウトをいくつか設計し特性比較から現象機構を検討する。また、電流コラプスのさらなる抑制も考えなければならない。それには、表面パッシベーションの検討等をおこなう。
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Research Products
(7 results)