2012 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な縮環構造を有する神経毒(-)-アニサチンの不斉全合成研究
Project/Area Number |
10J01765
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小椋 章弘 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 全合成 / GABAA受容体 / セスキテルペン / 不斉合成 / アニサチン |
Research Abstract |
アニサチンはシキミの種子より有毒成分として単離されたセスキテルペンである。GAB船受容体を強力に阻害する神経毒として知られており、植物由来の毒として最強のものの一つである。またアニサチンは比較的小分子でありながら、スピロβラクトンを含む高度な縮環構造や8つの連続する不斉中心を有しており、合成化学的にも興味深い化合物である。以上の理由から、これまでアニサチンの合成研究が数多く行われてきたが、その全合成例は一例のみにとどまっている。そこで私は、新規合成戦略に基づくアニサチンの不斉全合成を達成するべく研究に着手した。まずは合成経路の確立を目的として、ラセミ体の基質を用いて研究を進めることとした。合成戦略としては、アニサチン中央部の多置換シクロヘキサン環を高度な立体制御のもと構築することを考え、ビシクロ[2.2.2]骨格をその前駆体として利用することとした。この戦略に従い、前年度の検討では鍵となるスピロβラクトンの構築を経て、ラセミ体でのアニサチンの全合成を達成することができた。 本合成経路では、合成中間体のフェノールがもつ1つの不斉中心の立体化学を活用して他の7つの不斉中心の構築を制御しているため、このフェノールを不斉合成できればアニサチンの不斉全合成が可能となると考えられる。種々検討の結果、光学活性なブテノリドに対するロジウム触媒を用いたアリールポロン酸のジアステレオ選択的1,4-付加反応によって目的の不斉中心を構築することができた。数工程の変換により合成中間体のフェノールへと導いた後、前年度までに確立したラセミ体での合成経路を元に変換を進め、アニサチンの不斉全合成を達成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
合成中間体の合成法を改良することによって、アニサチンの不斉全合成を達成することができた。本成果は論文発表を行い、高い評価を得ている。
|
Research Products
(2 results)