2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J01782
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
家中 信幸 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙背景放射 / 可視光天文学 / ダスト / 散乱光 / 分子雲 / 銀河形成 |
Research Abstract |
可視光宇宙背景放射には赤方偏移6から現在までに放射された光が記録されており、銀河や活動銀河核の形成、宇宙大規模構造の成長を考察するための重要な物理量であるが、背景放射に比べて圧倒的に強い前景光に妨げられて、いまだに確かな測定結果は得られていない。 本研究では、暗黒星雲とその周辺の空の可視光の輝度を比較することで地球大気の光や太陽系のダストによる前景光を分離し、さらに遠赤外線との比較によって銀河系のダストによる散乱光(銀河拡散光)を分離することで背景放射を測定する。このためには可視光において暗黒星雲とその周辺の広い領域の空の輝度を精度よく測定する必要がある。 平成23年度の成果は以下のとおりである。 (1)東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡および、名古屋大学MOA-II望遠鏡(ニュージーランド、マウント・ジョン天文台)を用いて、可視光領域をカバーする5つの波長帯(u,g,B,V,Rバンド)での観測を行った。 (2)東京大学木曽観測所/天文学教育研究センターで新たに開発された、超広視野カメラ、KWFC(Kiso WideField Camera)を用いた試験観測を開始した。このカメラは従来の観測装置の6倍の面積の空を一度に観測することができ、さらにノイズも大きく軽減されるため、本研究の遂行に非常に適したカメラである。 (3)以上の観測で得られた合計7つの高銀緯ダスト雲および、1つのブランクフィールドのデータの解析を行い、可視光の輝度と遠赤外線の輝度の間にはどの波長帯においても相関が見られることが確認された。これにより銀河拡散光の可視光におけるスペクトルの形を得ることができる。銀河拡散光のスペクトルを決定することは、可視光背景放射を抽出するために必要となる前景光の除去の精度を高める上で非常に重要であり、本研究の目的達成向けた重要なステップである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、北半球においては東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡を、南半球においては名古屋大学MOA-II望遠鏡を用いて、複数の赤外線ダスト雲の観測を遂行した。これらの観測により、可視光背景放射測定という目的を達成するのに十分なデータが集まりつつある。さらに本研究にとって非常に有用な特徴を持つ広視野カメラ(Kiso WideField Camera)が計画通り本年度中に完成し、試験観測を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の遂行に当たっては、計画段階では考慮されていなかったフラットフィールディングの精度が問題となったが、すでに昨年度と本年度の研究によって、この問題を解決する観測手法を確立することができている。今後は、この手法を用いて今年度に取得された観測データの解析を進める。また、新たに公開されるあかり衛星による遠赤外線のデータを今後は使用することで、より精度の高い可視光背景放射の測定を目指す予定である。
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