2011 Fiscal Year Annual Research Report
「民意」をめぐる動態的研究―住民投票・地方選挙の分析をもとに―
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10J01792
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
塩沢 健一 中央大学, 文学部, 特別研究員PD
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Keywords | ごみ問題 / 出直し選挙 / 地方政治 / 投票行動 / 東京都 / 多摩地域 / 政治学 |
Research Abstract |
本年度の研究においては、可燃ごみ処理の問題に端を発し、一年の間に二度の市長選挙が行われた東京都小金井市に着目し、二度目の選挙となった12月18日の市長選挙から約2ヶ月後の2月中旬より、郵送調査を実施した。市内の有権者2,332名(40人に1人の割合で無作為抽出)を対象として実施した結果、回収数は847件に達した。 2011年4月の選挙では、四期目を目指した現職の稲葉孝彦を新人の佐藤和雄が破り当選を果たしたが、可燃ごみ処理の外部委託をめぐる選挙時の佐藤の発言が周辺市の反発を招いたことから、小金井市の可燃ごみの受入れがストップし、就任からわずか半年余りで辞職に追い込まれた。その後の出直し選挙では稲葉が返り咲きを果たしたが、その要因の一つは、「反稲葉」の候補が一本化されなかったことにあった。 こうした一連の選挙状況も反映して、12月の市長選挙における投票理由を概観すると消極的な記述が目立ち、明確な争点があったにもかかわらず投票率が伸び悩んだ出直し市長選では、投票に行った人でも積極的な選択をした有権者は必ずしも多くなかったと言える。ただ、全体としてみれば、ごみの減量やリサイクルに対する市民の意識は高く、政治に対する関心も比較的高く、また投票義務感や政治に対する信頼なども決して低いわけではないことも、調査結果から明らかとなった。したがって、出直し市長選挙における市民の積極的な参加および投票行動が見られなかったのは、市民のごみ問題や選挙に対する関心自体が総じて低かったというわけではなく、ごみ問題に関する各候補の主張に明確な違いを見出しにくかったことや、候補者が乱立し選挙の構図が分かりにくいものとなったことなどが影響していると思われる。他方、4月の選挙で佐藤に投票した人に関しては、棄権に回る人の割合が相対的に高かったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、住民投票の実施が見込まれていた長野市で結果的に投票実施が見送られたため、研究目的に合致する他の調査地を探すのに苦労した分、平成23年度においては調査実施と集計までにとどまり、具体的な分析にはまだ踏み込めていない。一方、22年度の調査の成果については、日本政治学会での報告を行うとともに、報告論文をもとに加筆・修正したものを学術誌に投稿し、現在査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
小金井市で実施した郵送調査については、今年10月に九州大学で開催される日本政治学会ポスターセッションにて報告を行うことが決定しているため、今後、統計学的な分析を試み、二度の市長選挙における「民意」の動態について明らかにしたい。また、平成24年度については、5月20日に住民投票が実施される鳥取市で郵送調査を行う予定にしており、合併前の旧鳥取市と旧町村部との地域間の意識・行動の相違なども考慮に入れながら、争点となる市庁舎整備に対する意識や投票行動の規定要因について探ることとする。
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