Research Abstract |
KamLANDにおける太陽ニュートリノ観測においては,主たるバッググラウンド事象は,検出器外部から入射するガンマ線,検出器内部の放射性不純物,宇宙線ミュー粒子による原子核破砕事象に由来する不安定核によりもたらされる.ガンマ線はKamLAND中央部を選択的に用いることにより効果的に減らすことができ,また不純物に関しては,2007~2009にわたり,液体シンチレータの蒸溜を行い,極限まで低減した.一方,原子核破砕事象および,その後の不安定核の崩壊事象は既存電子回路が不感状態になるためにデータ収集が不十分であった.この点を補うため,新規にデッドタイムフリー電子回路を開発した. 本年度の研究においては,デッドタイムフリー電子回路を用い,宇宙線ミュー粒子による原子核破砕由来の不安定核の崩壊事象同定を第一の目標として,ついで,それによる太陽ニュートリノの高精度観測を第二の目標として研究を行った. まず,不安定核の検出に必須である,データ収集の安定化と正当性を保証するために,データ収集系に改良を加え,オンラインデータ解析ツールによるデータの常時評価を行った.この結果とデータ収集コントロールツールの改良により,異常の自動発見と異常時のデータ収集の自動再起動を可能とし,これによって正常データ収集時間の最大化を図った.これにより,データ収集時間のうちの90%以上のデータ利用を可能とした. ついで,取得したデータについて不安定核の同定の解析を行った.ここで,不安定核の生成と同時に生成され,不安定核崩壊事象同定に必須である中性子事象同定の解析を行い,その結果を用い,短寿命の不安定核^<10>Cの事象同定により評価を行った.この結果,データ収集の時間のvetoを行わない状態で~60%の同定効率,データ収集時間の~7%のvetoにより~85%の同定効率を達成した.さらに不安定核^<11>Cの事象同定が今後の鍵である.
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