2011 Fiscal Year Annual Research Report
ドミノ型三成分結合形成反応を用いた縮環型化合物合成法の開発と天然物合成への展開
Project/Area Number |
10J01905
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 浩亮 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | quinocarcin / ブロモアレン / ピロリジン / シス選択的 / クロスカップリング / 金触媒 / 環化付加反応 |
Research Abstract |
Quinocarcinは、6つの不斉点と、特徴的な縮環型五環性骨格を有する合成化学的に挑戦的な化合物であり、そのリンパ性白血病細胞に対する著しい増殖阻害活性から、医薬品標的化合物としても有望視されている。申請者は前年度に確立した中心骨格構築法をもとに、quinocarcinの全合成研究を行った。申請者の合成戦略は、クロスカップリング反応-環化付加反応を基盤としているため、収束的合成が可能となる。まず申請者は、クロスカップリング反応のビルディングブロックである、2,5-cis-ピロリジン誘導体の合成に着手した。目的のピロリジン誘導体は、申請者の所属研究室で開発されたブロモアレンの分子内シス選択的アミノ化反応により、立体選択的に合成できるものと考えた。市販の化合物から9工程で誘導したブロモアレンのジアステレオマー混合物に対し、DMF中、NaHを作用させたところ、2,5-cis-ピロリジン誘導体を高収率、かつ高いシス選択性で得ることに成功した(dr=96:4)。その後、7工程の官能基変換を行うことで、目的のピロリジン誘導体を合成した。続いて得られたピロリジン誘導体と光学活性体として調製したフェニルグリシノール誘導体を用いて薗頭カップリングを行った。アルキン成分のホモカップリングを防ぐため、アスコルビン酸ナトリウムの添加が重要であることを見出した。しかし、続く金触媒によるヒドロアミノ化反応では、モデル実験で確立した反応条件では、所望のジヒドロイソキノリンを効率的に得ることは出来なかった。そこでBoc基の除去によりアミン体としたのち、同様の反応条件に付したところ、目的のヒドロアミノ化反応が効率的に進行した。生成したエナミンに対し、NaCNBH3を作用させたところ、単一の立体異性体としてテトラヒドロイソキノリンを得ることに成功した。続く分子内アミド形成により、 quinocarcin中心骨格を有するラクタムへと誘導した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロモアレンのシス選択的分子内ヒドロアミノ化反応により、2,5-cis-ピロリジンを高シス選択的に合成することに成功した。薗頭カップリング反応、金触媒による環化付加反応では、昨年度にモデル実験で確立した反応条件では所望の化合物が得られなかったが、詳細な検討の結果、テトラヒドロイソキノリンを高収率で合成することに成功している。また分子内アミド形成を選択的に行うことにより、quinocarcin中心骨格を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
金触媒によるヒドロアミノ化反応の位置選択性を制御するためには、ジヒドロベンゾフランをクロスカップリングのユニットとして用いる必要があるが、quinocarcinの全合成を達成するためには、ジヒドロベンゾフラン環を開裂し、フェニルグリシノール誘導体へと変換する必要がある。ルイス酸によりジヒドロベンゾフランを活性化することで、求核攻撃により開環反応が進行すると考えられる。またQuinocarcinの合成を達成したのちは、本合成戦略の収束的特徴を活用し、関連アルカロイドであるtetrazomineの合成を合わせて行う予定である。
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Research Products
(4 results)