2011 Fiscal Year Annual Research Report
樹木細根の成長・枯死・分解過程における生理的機能の解明
Project/Area Number |
10J02100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧田 直樹 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 根呼吸 / 微生物呼吸 / 枯死根 / 分解 / 重量減少 / 回転速度 / 炭素循環 / CO2 |
Research Abstract |
本研究『樹木細根の成長・枯死・分解過程における生理的機能の解明』の目的は、根が発生してからの時間変化に伴う根の生理特性の変動を、根のエイジ(Root Age:発生してからの経過日数)と呼吸量の観点から明らかにすることである。 本年度は、昨年度、土壌中に設置した透明アクリルでコーティングした自動スキャナ装置を用いて、根の動態観察を継続した。同時に温度や含水率といった環境要因の連続測定も継続して行った。このスキャナを設置し、任意の頻度で根の自動撮影ができる画像測定システムを用いることにより、「いつ・どこで・どんな根」が成長あるいは枯死したのか、という詳細な根の時系列情報を獲得することに成功している。また本年度は、この画像から根と土壌を抽出するプログラミングを開発し、根の動態を自動で解析する手法を共同研究にて開発した。その成果は、国際誌に掲載予定である(Nakano Makita et al.(2012:Journal of Plant Nutrition and Soil Science)。 また本年度は、樹木根の枯死・分解過程の基礎情報として、リターバックを用いての分解試験をおこなった。本研究では、樹木細根が枯死してからの分解過程を、分解物「枯死根」と分解者「薇生物」の両面から定性的・定量的に解明し、何が分解過程を規定しているかを探索することを目的とした。そして、直径2mm以下をさらに細かく区分し、形態および化学組成の違いが、微生物分解呼吸にどれほど影響を与えるかを評価することを目的とした。枯死細根の分解過程は、直径階級の違いによって有意に異なることが明らかとなった(P<0.001)。両樹種ともに0-0.5mm根の微生物分解呼吸(Q10補正値)は、0.5-2mm根に比べて高かった。また20℃で標準化した呼吸量は、時間経過に伴って呼吸量は変動した。N動態の結果では、初期N濃度が高い0-0.5mm根と低い0.5-2mm根ともに、分解初期にN不動化が認められたが、無機化に移行する時間は直径および樹種によって異なった。これらの結果から、直径の違いによって、枯死根の分解過程およびメカニズムは異なることが明らかとなった。また分解時間が進行するにつれて微生物呼吸は変動し、環境条件だけでなく、基質の動態とも密接な関係があることも明らかとなった。以上より、微生物分解呼吸は、初期の形態・化学組成で大きく規定され、また時間経過に伴う組成の変化に規定されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、野外における正確な測定が困難であった樹木根の生理・形態特性を評価することであった。結果として、マレーシア・パソ熱帯雨林の13種の根系(直径0.23-269.50mm,n=300)を用いた根呼吸の測定から、形態特性の違いによって根呼吸速度が異なるという特徴が明らかとなった。この成果は森林科学分野の国際誌Tree Physiologyに掲載されている(Makita et al.Patterns of root respiration rates and morphological traits in 13tree species in a tropical forest.)。また研究実績でも述べたように、計画した実験は順調に進行しており、森林学会・生態学会・熱帯生態学会・AsiaFluxなどで発表を行った。国際誌への成果掲載、活発な学会発表、実験成果から判断して、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、任意の頻度で根の自動撮影ができる画像測定システムを用いることにより、「いつ・どこで・どんな根」が成長あるいは枯死したのか、という詳細な根の時系列情報を獲得することに成功している。また、この画像から根と土壌を抽出するプログラミングを開発し、根の動態を自動で解析する手法を共同研究にて開発した。その成果は、国際誌に掲載予定である(Nakano Makita et al.(2012:Journal of Plant Nutrition and Soil Science)。次年度では、その画像データを詳細に解析し、根の動態ならびに根の一生を明らかにしていく予定である。また、並列して行っていた枯死根の分解過程の結果を加味し、根の発生から土に還元されるまでの"根の一生"を、画像データとフラックスデータの両面から詳細に調べていきたいと考える。
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Research Products
(7 results)