2011 Fiscal Year Annual Research Report
磁気プラズマセイルの推力特性及び非定常現象に関する研究
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10J02178
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
大塩 裕哉 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 磁気プラズマセイル / MPDアークジェット / 磁気圏 / 推力 |
Research Abstract |
本年度は、磁気プラズマセイルの新しい磁気圏拡大手法であるリングカレント型磁気圏拡大を主に研究を進めた。 磁気プラズマセイル(Magneto Plasma Sail: MPS)は、太陽からやってくるプラズマ流である太陽風を利用した深宇宙推進システムである。太陽風プラズマを、宇宙機に搭載したコイルの作る磁場で受け止めることにより推力を得る。推力は、太陽風を受け止める磁場の帆である磁気圏の大きさによって決まる。しかし、他の推進システムに対し十分な優位性を得るためには、磁気圏を拡大させる手法が必要である。本年度は、コイル周辺にプラズマを配置し、プラズマ中にリング状の電流を流し、擬似的な大きなコイルを作り出すリングカレント型磁気圏拡大の実験と数値解析を主に行った。 実験は、JAXA/宇宙科学研究所の大型真空チャンバー(φ2m×3m)を用いて行い、φ280mmの冷却コイルと小型MPDアークジェットを用いてコイル磁場増加実験を行った。その結果、1.3倍の磁場の増加を達成し、初めてリングカレントによるコイル磁場の増加を実証した。また、電流プローブによる計測により、リングカレント分布を取得し、リングカレントによる磁場増加の特性を明らかにした。 リングカレント磁気圏拡大の更なる改善のため、リングカレント計算用数値解析コードの開発を行い、宇宙スケールから実験スケールまでの数値解析を行った。結果として、4.5倍以上の推力増加が可能であることを示した。また、磁気圏拡大が行われる時間スケールの解明、噴射用プラズマの必要なパラメータを示した。 本年度の研究により、リングカレント型磁気圏拡大の問題点・改善点を明らかにし、今後プロジェクトの方向性についての参考データを提示できた。 実験条件を改善するために、太陽風模擬プラズマ源として世界初となるクラスターMPDアークジェットの設計・開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、東日本大震災の影響で、5月まで実験ができなくなってしまったこと、購入品の納品が遅れた影響もあり、前半研究が遅れてしまった。そこで昨年度は、磁気圏拡大の研究に注力することになった。その後の研究により、リングカレント型磁気圏拡大の実証や、数値解析による数値予測を行うなど、本年度の研究対象である新しい磁気圏拡大手法について一定の成果を上げることができた。2倍の磁気圏拡大には届かなかったものの、数値解析的に10倍以上の磁気圏拡大の方針をえることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究により、リングカレント型磁気圏拡大の実験室実験による実証と数値解析による改善案を得ることができた。本年度は、数値解析で得られた4.5倍以上の推力増分を達成するための実験を行っていく。具体的には、昨年度末に製作した熱陰極を用いた定常プラズマ源を磁気圏拡大用のプラズマ源として利用し、数値解析の条件を実験的に実現する。 また、昨年度末に設計・製作した。3台のMPDアークジェットをクラスター化した新しい太陽風プラズマ源を用いて模擬太陽風のテストセクションを大きくし、MPSの実験室実験のパラメータ設定の自由度を広げる。
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