2011 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジンによる脊椎動物に共通の排卵誘導機構の解明
Project/Area Number |
10J02188
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤森 千加 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | メダカ / 排卵 / プロスタグランジン |
Research Abstract |
プロスタグランジン(PG)は、多くの脊椎動物において排卵誘導作用を示す因子として知られているが、その分子機構については未だに明らかになっていない。そこで、本研究では排卵研究に適したモデル生物であるメダカを用いて脊椎動物に共通のPGによる排卵誘導の分子機構を明らかにすることを目的とする。平成22年度までにPG合成酵素であるCox-2及びPGE2受容体EP4bの解析を行ってきた。平成23年度において、主に以下の研究成果が得られた。 1.PGE2受容体EP4bのアンタゴニストで排卵を阻害した時の濾胞のアクチン重合度を測定したところ、正常に排卵させた濾胞に比べて有意に減少していた。このことからPGE2は排卵時にアクチン重合の調節に関与していることが示唆された。 2.アクチン重合の阻害剤をin vitro排卵実験系に添加することによって排卵が強力に阻害された。したがって、排卵時にはアクチン重合調節が関与していると考えられた。 3.アクチン重合調節因子の一種であるRhoキナーゼの阻害剤をin vitro排卵実験系に添加することによって排卵が阻害された。この結果から、排卵時のアクチン重合調節にはRhoキナーゼの活性化が関与していると考えられた。 以上の結果よりメダカではPGE2が、EP4b-Rhoキナーゼ-アクチン重合調節といった経路を介してPGが排卵に作用していると予想された。 これまでに報告された排卵時におけるPGの役割は哺乳類に限定された機能についてであった。しかし、今回得られたPGがアクチン重合調節を介して排卵に寄与することを示唆する結果は、新規の知見であり、魚類から哺乳類に至る脊椎動物に共通したPGの排卵時における分子機構の解明に向けて大きく前進したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の2年目の研究計画に該当する排卵時に作用するPG受容体の同定及び解析については論文を作成し、現在Molecular Cellular Endocrinology誌に査読中である。Rhoキナーゼが受容体を介して誘導される因子として予想される結果を得ることができた。また、当初の研究計画の3年目に該当したPG受容体とホルモン産生との関連についても平成22年度中に既に結果を得ており、上記の論文に発表予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
9.研究実績の概要に記した結果を踏まえ、具体的に以下の課題について解決する。 (A)排卵前濾胞においてPGはRhoキナーゼを活性化させるか メダカ排卵前濾胞においてRhoキナーゼ活性化に関わる因子Rho-GTPの検出を試みる。また、EP4アンタゴニストで排卵阻害させた濾胞についてもRho-GTPの検出を行う。さらにRhoキナーゼの下流因子の同定を行う。 (B)アクチン重合調節がどのように排卵に寄与しているか EP4bを発現させたメダカ培養細胞を用いてPGE2添加によるアクチンフィラメントの挙動を観察する。また、その挙動が排卵前濾胞でも観察できるかどうか確認する。
|