2011 Fiscal Year Annual Research Report
インドールアルカロイドの短段階全合成と環化モード制御による構造多様化
Project/Area Number |
10J02200
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
溝口 玄樹 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インドールアルカロイド / 構造多様性の創出 / 短段階合成 / 遷移金属触媒 / 生合成膜倣合成 / ジヒドロピリジン |
Research Abstract |
本研究では、アスピドスペルマ/イボガ型アルカロイドの合成と、天然物類似低分子の構造多様性の創出を目指した。これらアルカロイドの骨格は二つのジエンを有する共通の生合成中間体デヒドロセコジンより、様式の異なるDiels-Alder反応により形成される。そこで、生合成中間体を模倣したジヒドロピリジン化合物を合成し、その多彩な反応性を活用することでアスピドスペルマ/イボガ型のような天然型のみならず、非天然型のスカフォールドも系統的に合成しようと考えた。 昨年、ジヒドロピリジン環構築法の開発とイボガ型骨格の構築を報告したが、その効率の改善と多様性の創出が課題であった。そこでまず、銅触媒を用いるジヒドロピリジン環化条件を改善した。配位子を検討した結果、室温においても低い触媒量で高収率での変換を可能とする条件を見出した。この条件を適応することで、ジヒドロピリジン環形成とそれに続くDiels-Alder反応によるイボガ型骨格合成の収率向上を達成した。この際、立体選択的なDiels-Alder反応を実施できれば縮環骨格の立体化学を制御できる。実際、環化前駆体への不斉補助基の導入により高ジアステレオ選択的な骨格構築を実現した。得られたイボガ型骨格の官能基変換を経て、天然物カサランチンのエナンチオマーの不斉全合成をトリプタミンより僅か10工程で達成した。また、反応条件を変えることで、ジヒドロピリジン中間体より異なる天然型のヌゴウニエンシン型や八員環を有する非天然型骨格などを作りわけることに成功した。 更に、フォトレドックス触媒を用いる条件により、イボガ型骨格の炭素-炭素結合を開裂させ、抗がん剤ビンブラスチンのベルバナミンサブユニット様の骨格へと変換できた。 これに加え、合成中間体を活用し多彩な環化反応を行うことで、最終的に同一の合成プロセスより7種類の天然型・非天然型スカフォールドをトリプタミンよりそれぞれ7工程以内で創出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画では(1)アスピドスペルマ型骨格の構築、(2)不斉合成、(3)合成経路の効率化と構造多様性の創出を主題に挙げた。実際、本年度の研究により、イボガ型骨格を持つカサランチンの不斉全合成を達成している。また、合成経路の短縮は行わず、合成中間体を更なる構造多様性の創出に活用する戦略を考案し、効率的なスカフォールドの創出へ結びつけた。一方、アスピドスペルマ型骨格の構築は未達成ながら、ジヒドロピリジン環化法の改良に成功し、土台を整えることができた。以上より、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、アスピドスペルマ型骨格の構築を達成する。ジヒドロピリジンをルイス酸で活性化することで実行可能と考えている。本年度の研究でジヒドロピリジン環化を最適化したため、反応の複雑化を防ぎ、望む骨格を得ることができると期待される。また、本年度の研究で得られた天然物類似スカフォールドを足場として更なる構造多様化を試みる。生理活性天然物には二量体型アルカロイドが多いことから、スカフォールド同士を多彩な様式で二量化した二量体ライブラリーの構造多様性の創出を考えている。得られた低分子群を共同研究によりアッセイし、新規生理活性分子の発見を目指す。
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Research Products
(5 results)