2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J02221
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川崎 猛史 京都大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員PD
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Keywords | 分子動力学法 / 弾塑性変形 / 構造解析 |
Research Abstract |
多粒子系分子動力学計算で実現される結晶・多結晶・ガラスなどの様々な固体の性質を系統的に調べた.それに先立ち,これらの乱れを的確に抽出する秩序変数であるdisorder variableを,6回の球面調和関数用い開発した.このdisorder variableは,粒子座標から固体中の乱れ(欠陥や粒界)を系統的に抽出し、計算機実験のみならずコロイド実験系における解析にも応用可能であるという特徴をもつ.次に我々は,上のdisorder variableを用い,固体の塑性変形時における構造と転位(dislocation)運動との関係について調べた.塑性変形時におけるslip箇所の特定は,粒子の各隣接粒子との相対運動の抽出が要請される.そのため我々は,ある時間tで隣接に存在した粒子が時間t+dtで隣接から乖離したbroken bonds粒子を塑性変形時において特定した,その結果いずれの固体においても、間欠的な多体的協同運動が発現することを見いだし、特に結晶や多結晶系では面心立方格子{111}面での滑りが起こっていることを確認した.また結晶中のどういった部分で大規模な間欠的協同運動が起こっているかを上のdisorder variableを用いて調べると,結晶中の積層欠陥や多結晶体ではさらに粒界での滑りによって支配されていた.一般的に粒界での滑りは比較的良く知られているが,積層欠陥での滑り運動に関する知見は少ない。この様な中、本研究ではdisorder variableを用いることにより結晶中の積層欠陥を容易に見つけることができ,さらにbroken bonds粒子を特定することにより積層欠陥部分"/"において/CABC…から/BCAB…へと滑り,一連の積層がABCA/BCAB…である最安定な面心立方格子(fcc)構造が回復するというメカニズムを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は、固体の構造解析に有用な秩序変数の開発に成功した。この秩序変数がもたらす恩恵は、計算機科学のみならずコロイドの共焦点レーザー顕微鏡実験の解析にも応用可能であることからも革新的な解析技法であることが認められ,The Journal of Chemical Physics Editors' choices for 2011に選出された.この秩序変数を用いることで固体中の様々な乱れの要素を系統化することができた。この系統化された乱れは、さらに塑性変形にともなう集団運動と大いに関係があることを見出した。このことは基礎物理学のみならず冶金学における重要性を有すると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、水和効果にともなうクラスタリングについての研究を行う。研究計画書に記載した通り、分子動力学法と電磁気学のハイブリッドな計算を行い、多体的な相互作用に起因する構造について議論したい。また、別の方向からのアプローチとして、水分子とイオンを分子動力学法において実効的なポテンシャルを導入し上記の問題を考えたい。
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