2011 Fiscal Year Annual Research Report
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10J02260
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
網田 英敏 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 採餌行動 / 社会性 / 神経生理学 / 報酬 / ニワトリ雛 / 側坐核 / オペラント条件づけ / 衝動性 |
Research Abstract |
前年度の研究成果(ニワトリ雛の競争採餌による衝動性への即時的/長期的影響)を論文にまとめた。この論文は9月にFrontiers in Neuroscience誌に掲載された。 システム生理学実験を開始し、自由行動下のニワトリ雛の側坐核から単一ニューロン活動を記録した。78個の報酬関連活動を記録した。そのうち手がかり刺激が提示されてから報酬が出現するまでの遅延期に活動が上昇するニューロンは19個みつかった。また、報酬が出現したあとの報酬期に活動が上昇するニューロンは35個みつかった。さらにそのうち11個のニューロンが競争文脈によって修飾を受けた。 側坐核の報酬関連活動が競争文脈によって修飾を受けるという結果は、先行研究(Izawa et al.2005)の結果を支持するとともに、以下の新しい知見を示唆する。1つ目は、競争文脈による神経修飾は即時的に起こっているということである。競争採餌は選択に対して長期的に作用しているが、神経修飾はもっと早い段階で起こっている可能性がある。2つ目は、腹側被蓋野ドーパミン作動性ニューロンによって側坐核の神経修飾が起こっているということである。先行研究(Yanagihara and Hessler 2006)はオスのキンカチョウにおいて腹側被蓋野の神経活動がメス個体の提示によって文脈依存的に活動が上昇することを示した。競争文脈において、腹側被蓋野ドーパミン作動性ニューロンが側坐核の神経活動を修飾している可能性がある。3つ目は側坐核が報酬を評価しており、その評価にもとづいて選択がおこなわれているということである。先行研究(Izawa et al.2003)は側坐核の破壊によって、衝動的選択が亢進することを示した。側坐核の神経修飾が変化することによって、ニワトリ雛の衝動的選択が亢進している可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では2年目に行う予定だった遺伝子発現解析による衝動性に関連した脳部位の同定を行わなかった。その代わり、3年目に行う予定だった側坐核の単一ニューロン活動記録を行った。研究の目的は変更していないが、研究の進め方に関して変更を行った。具体的には、側坐核を中心とした神経ネットワーク(投射領域の特定)、および神経修飾(シナプス可塑性の変化)を調べることにより、競争採餌が衝動的選択を亢進する作用機序を明らかにする。上記のような変更を行ったため、「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、記録領域を特定するために、免疫組織化学染色を使ってニューロンをラベルする。側坐核はcoreとshellに分かれる(Balint and Csillag 2007)。Calbindinをマーカーにした免染を行うことで、これら小領域を区分することができる。つぎに、記録しているニューロンが腹側被蓋野に投射しているかを調べるために、電気刺激と活動記録を同時に行う。腹側被蓋野に刺激用電極を刺入し、側坐核に記録用電極を刺入する。もし、記録している側坐核ニューロンが腹側被蓋野に投射しているならば、腹側被蓋野の刺激直後に逆行性スパイクが記録できる。さらに、競争文脈により側坐核のシナプス可塑性が変化するか調べるために、マルチユニット記録を用いた相互相関解析を行う。競争文脈の前後において、側坐核ニューロン間の発火タイミングの同期率を比較する。
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Research Products
(6 results)