2011 Fiscal Year Annual Research Report
JIP1によるAPP軸索輸送機構の解明とアルツハイマー病発症との関連性の解析
Project/Area Number |
10J02269
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
荒関 雅彦 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | キネシン / アルツハイマー病 / 神経軸索輸送 / APP |
Research Abstract |
私はAPP小胞の軸索輸送を観察するため、野生型およびJIP1遺伝子破壊マウス胎児脳から初代培養神経細胞を調製し、蛍光タンパク質EGFPを融合させたAPP-EGFPを遺伝子導入・発現させ、全反射顕微鏡を用いたライブイメージングを行った。その結果、野生型と比較してJIP1遺伝子破壊神経細胞においてAPP小胞輸送速度の低下が見られた。次に、JIP1遺伝子破壊神経細胞にAPP-EGFPとJIP1bを共導入するとその速度低下が解消されることも確認した。また、更にJIP1bのJNK結合領域欠失変異体を作製し、APP-EGFPと共導入すると速度低下が解消されることを発見した。これらの結果はJIPlbとJNKの結合がAPP小胞の高速輸送に必要でないということを示す重要な知見になると考えられる。 これらの研究と並行して、JIP1と同様にキネシン-1と結合するAlcadein(Alc)という当研究室で単離されたI型膜タンパク質についての解析も行ってきた。JIP1およびAlcのキネシン-1結合領域が明らかになっているので、両者のキネシン-1活性化に対する違いを比較検証することとした。培養細胞にキネシン-1のサブユニットを過剰発現させたときキネシン-1は微小管に結合できない不活性状態となり輸送が観察されなくなるが、Alcのキネシン-1結合motifを融合した人工膜タンパク質を共発現させるとキネシン-1の活性化が起こり輸送が観察された。当該年度はさらに精製チュブリンを利用してMicrotubule binding assayという生化学的なアプローチからキネシン-1の活性化を証明することに成功し、蛍光観察以外での新たな知見を初めて得ることができた。この結果はわずか10アミノ酸のmotifがキネシンの活性を制御している可能性を示唆しており、新規性の高い知見としてTraffic誌に掲載される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2年目でAPP小胞輸送に対するリン酸化の影響を検証することができたため。また3年目で実験を予定しているヒト型APPを発現するJIP1遺伝子破壊マウスも既に作製済みであることから、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
JIP1遺伝子を破壊したADモデルマウスを作製し、in vivoでJIP1がADに関与している可能性を検討する。JIP1によるAPP輸送変化がAD発症に寄与するかどうかを検証するため、ADモデルマウスとJIP1遺伝子破壊マウスの交配によってJIP1遺伝子を破壊したADモデルマウスを作製し、老齢期における脳内Abeta定量および脳切片を抗Abeta抗体で免疫染色を行う。マウスは作製済みで脳切片での免疫染色の技術も習得しつつあるので、病理的所見が見られる月齢に達し次第、検証を行う。 神経軸索におけるAPP小胞の高速輸送にはJNKによるリン酸化が関与していないかどうかを阻害剤などを用いて更に詳細に検証する。JIP1非依存的APP軸索輸送の分子機構の解明を行う。AD脳ではリン酸化が亢進しているという事実、およびJIP1とKLCがリン酸化により解離するという当研究室で得られた知見を合わせて考えると、AD脳ではJIP1とキネシン-1の結合が低下している可能性が想定される。したがってこの分子機構を明らかにすることはAD発症機構の解明につながると考えられる。
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