2010 Fiscal Year Annual Research Report
核膜孔ゲルの糖鎖選択的通過を利用した新規マテリアルの創製
Project/Area Number |
10J02318
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
関口 翔太 北海道大学, 大学院・総合化学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノ微粒子 / 核膜孔 / 核移行 / 糖鎖 |
Research Abstract |
細胞質-核間の物質輸送は、核膜に存在する多数の孔(核膜孔)を通して行われている。この核膜孔は遺伝子導入において最後の障壁として存在し、このために効率的な遺伝子発現が行えないことが知られている。したがって、核膜孔を効率的に通過するマテリアルの作製及びその通過メカニズムの解明は、遺伝子導入における重要課題となっている。本研究では、これまで申請者が作製してきた核移行性糖鎖提示ナノ微粒子をツールとして、核膜孔における分子の通過メカニズムを解明することを目的とした。 本年度の研究実施計画に基づき、我々がこれまで作製してきた核移行性糖鎖修飾ナノ微粒子の核膜孔通過メカニズムに関する速度論的解析を行った。核膜孔内部のタンパク質(Nup62)に対する糖鎖修飾ナノ微粒子(主にグルコース誘導体)の結合挙動を表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いて観察したところ、核移行性の糖鎖(グルコースの3~7糖)はNup62に強く結合したのに対し、核移行性のないもの(1糖)は全く結合しなかった。このことから、核膜孔内部への結合が核膜孔の通過に必要であることが分かった。また、結合の支配要因となる相互作用については、水素結合によるものであるという示唆を得た。これは天然の核移行性タンパク質の通過メカニズムと全く異なるものであり、糖鎖修飾ナノ微粒子の核移行は、細胞の持つ核内輸送系を阻害しない、細胞毒性の低いものであるといえる。また、本研究が遺伝子導入に応用できることを示すため、生細胞における核移行実験も行った。細胞質に糖鎖修飾ナノ微粒子をマイクロインジェクションしたところ、約5分で核内への拡散が観察された。これらの細胞はその後分裂し、細胞毒性を全く示さなかった。細胞のがん化や副作用の可能性が少ないことからも、本研究は遺伝子導入にとって有効な手段となる。
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