2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子の3次元分子スケール水和構造計測に基づく高次構造-機能相関の解明
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10J02395
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井戸 慎一郎 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / AFM / 周波数変調検出方式AFM / FM-AFM / モノクローナル抗体 / IgG / 自己組織化 |
Research Abstract |
抗体分子は、液性免疫において主要な役割を果たすタンパク質分子である。抗体分子のファミリ中、最も一般的なクラスであるIgG(Immunoglobulin G)分子は、抗原と結合するFab(fragment, antigen-binding)領域と免疫細胞等に結合するFc(fragment, crystallizable)領域が、可動性の高いヒンジ領域で接続されたY字型の構造を有している。IgG分子をはじめとする抗体分子の免疫複合体の形成には、抗体分子の水溶液中における表面構造とその柔軟性とが本質的に重要である。よって抗体分子の構造-機能相関を解明するためには、X線結晶構造解析やNMRなど従来の平均的な構造解析手法では不十分である。いっぽう原子間力顕微鏡(AFM)は、測定可能な試料や環境に対する制約が一切存在しない実空間・サブ分子スケール表面構造観察手法であり、抗体分子の有する柔軟な分子構造を水中でありのままに観察できる。そこで本研究では、所属研究室で開発された液中で動作する周波数変調検出方式AFMを用いたモノクローナル抗体(IgG)の水溶液中における表面構造観察を行った。その結果、IgG分子がある種の電解質溶液中で自発的に6量体構造を形成し、さらにそれらが自己組織的に2次元結晶を形成することを初めて明らかにした。さらに本研究では溶液条件を適当に制御することにより、IgG分子単量体の観察にも成功しており、Fab,Fc各領域に存在する球状のタンパク質ドメイン(Igドメイン)構造やヒンジ領域の可視化にも成功した。本研究成果は、AFMが生命現象に関わる未知の構造を明らかにしたという点において、AFM技術の生体機能解析における重要性を示す画期的な成果であり、今後免疫系の分子機構解明へのAFMの応用が強く期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の成果として、タンパク質分子の一種である抗体分子の水溶液中における自発的な2次元結晶化を原子間力顕微鏡(AFM)技術を用いて世界で初めて明らかにした研究は、国内外の国際会議における口頭発表において高く評価された。そのいっぽうで本研究を含むこれまでのいくつかの研究成果が論文として学術雑誌に発表されておらず、平成24年度中の速やかな執筆・投稿が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度までの研究成果により、液中動作原子間力顕微鏡(AFM)を用いて生命現象に直接関係する生体分子の未知の構造がサブ分子スケールで解明できることが示された。今後の課題として、生体分子の水溶液中におけるゆらぎを含めた(動的)構造や、生体分子間の協同現象等を液中動作AFMを用いて直接観察することで、生体分子集合体のシステムとしての機能解明に迫る必要があると考えられる。
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Research Products
(5 results)