2010 Fiscal Year Annual Research Report
臨床応用へ向けた細胞内シグナル応答型遺伝子キャリアの創生
Project/Area Number |
10J02427
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土谷 享 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遺伝子デリバリー / 高分子素材 / ポリエチレングリコール / プロテインキナーゼ |
Research Abstract |
申請者は平成22年度研究実施計画に基づき、以下の2点に関して研究を行った。 (1)疾患に応じたキナーゼ(PK)応答型遺伝子キャリアの開発 当初の計画通り、まずRho kinase (ROCK)と呼ばれるPKの基質ペプチドとなり得る候補配列を150種類作製し、そのリン酸化評価を行った。その結果、リン酸化効率が高い基質ペプチドが8種類判明した。これまでに基質として20残基以下の短いペプチドレベルで報告された例はなく、ROCKを標的とした薬剤の開発へと応用が期待できる。基質ペプチドの中でも配列の特に短いものは高分子への修飾が容易だと思われる。そこで申請者はこれまでに判明した基質ペプチドの1つにビニル基を付加し、アクリルアミドと共重合した。このROCK応答型キャリアは実際に細胞中でROCKの活性に応答して遺伝子の発現を制御可能であった。現在、この実績をまとめた論文を2報投稿中である。 (2)ポリエチレングリコール(PEG)修飾による血中投与可能な遺伝子キャリアの開発 申請者はPEGを効率良くキャリアに修飾するために高分子主鎖構成要素であるN-イソプロピルアクリルアミドと活性エステルを有する主鎖を合成し、その後側鎖を保護したPKによりリン酸化される基質ペプチド、アミノ基を有するPEGを導入した。この合成法により同一主鎖、同一担持率の基質ペプチドで、且つ、様々な担持率のPEG修飾ポリマーを調製することに成功した。この手法により調製したPEG担持PK応答型遺伝子キャリアはPEGの担持率による影響の純粋な評価が可能となった。調製したPEG修飾キャリアのPK応答性、安定性の評価を行ったところ、PEG修飾に関わらずPK応答性を示し、また、塩、血清タンパク質の影響を受けることなく安定な粒子を形成していた。このような遺伝子キャリアは未だかつてなく、PK応答型遺伝子キャリアの治療応用へと前進したと考えられる。
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Research Products
(7 results)