2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規幹細胞マーカーDclk1を利用した大腸癌治療の基礎的検討
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10J02434
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 祐貴 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 消化管幹細胞 / 大腸癌 / 癌幹細胞 / Dclk1 |
Research Abstract |
研究代表者らは消化管の幹細胞マーカー候補として報告されているmicrotuble-associated kinase、doublecortin and CaM kinase-like-1(以下Dclk1)に注目し、正常腸管および腸腫瘍における役割の解析を行っている。平成23年度は以下を中心に行った。 1.正常腸管におけるlineage tracing解析 平成22年度に作出したDclk1-CreERT2ノックインマウスとRosa26Rマウスとを交配し、正常腸管におけるlineage tracing解析を行った。Dclk1-CreERT2/Rosa26Rマウスの正常腸管において、タモキシフェン投与により青いDclk1陽性細胞が腸管上皮に疎に出現し、腸管組織幹細胞のニッチと考えられているクリプト底部において最も多く発現が認められた。しかし、この細胞からlineageを示す青いラインが伸びることはなく、子孫細胞の供給は行われていないと判断された。さらに経時的に観察したところ、次第にDclk1陽性細胞は絨毛の上部に移動し、最終的に絨毛の頂部から管腔に脱落した。タモキシフェン投与21日後には、全ての青くラベルされた細胞が消失したことから、Dclk1陽性細胞は正常のホメオスタシスにおいて腸管の組織幹細胞として働いていないと結論付けた。 2.放射線照射・DSS投与による刺激状況下におけるlineage tracing解析 さらに研究代表者らは、炎症刺激により幹細胞性を発揮する可能性を考慮し、放射線照射およびDSS腸炎時におけるDclk1陽性細胞の動態を検討した。Dclk1-CreERT2/Rosa26Rマウスに8Gyの放射線照射あるいは2%DSSを1週間投与した上で、再生過程の腸管においてlineage tracingを行った。いずれのモデルにおいても、Dclk1陽性細胞が青いlineageのラインを伸ばすことはほとんど確認されなく、Dclk1陽性細胞は炎症からの再生過程においても幹細胞性を示すことは無いと判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最も困難と考えられていたDclk1-CreERT2のノックインマウスは平成22年度に作出に成功した。さらに本年度は予定していた通り、レポーターマウスであるRosa26Rマウスとのコンパウンドマウスの作出にも成功し、正常のホメオスタシスおよび刺激モデルにおいてlineage tracing解析を行った。さらに腸腫瘍モデルであるApcMinマウスとの交配からDclk1-CreERT2/Rosa26R/ApcMinマウスの作出にも既に成功していることから、研究の進展は順調であり、来年度の計画も予定通り実行できるものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年、作出に成功したDclk1-CreERT2/Rosa26R/ApcMinマウスを用いて、腸腫瘍におけるDclk1細胞の幹細胞性を検討するために、lineagetracing解析を行う。さらに現在はRosa26-iDTRマウスとの交配も進行しており、このマウスとの交配からDclk1-CreERT2/Rosa26R/ApcMin/Rosa26-iDTRマウスを作出し、腸腫瘍におけるDclk1細胞標的戦略の有効性についても検討する。
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