2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J02499
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
堤 康雅 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / トポロジカル超流動/超伝導 / マヨラナフェルミオン / エッジカレント / 固有角運動量 / 重い電子系超伝導 |
Research Abstract |
前年度に引き続き異方的なp波フェルミ超流動体である超流動ヘリウム3に注目し、表面に束縛されたマヨラナフェルミオンが運ぶエッジカレントを理論的に研究した。マヨラナフェルミオンは、粒子と反粒子が同一であるフェルミオンとして理論的に提唱されたが、実験では見つかっていない。マヨラナフェルミオンの性質を探る舞台として、トポロジカル超流動体でありギャップ構造のはっきりしている超流動ヘリウム3は適している。超流動ヘリウム3には、A相とB相の異なる超流動相が存在しており、A相表面ではマスカレントが、B相表面ではスピンカレントがマヨラナフェルミオンにより運ばれている。本研究では、エッジカレントとマヨラナフェルミオンの関係を微視的理論に基づいて考察することで、エッジカレントの温度変化を測定することがマヨラナフェルミオンの観測につながることを明らかにした。また、A相表面で流れるマスカレントは、超流動ヘリウム3に残された長年の謎である固有角運動量の問題と密接な関係があると考えられ、本研究で行ったマスカレントの定量的評価は、固有角運動量の問題に答える手がかりとなる。 さらに、超流動ヘリウム3の研究で得られた知見を活かして、異方的フェルミ超流動体である重い電子系超伝導体、UPt3,CeCoIn5,CeIrIn5について量子渦の侵入した混合状態についての研究も行った。特にUPt3については、熱伝導率の測定結果と準粒子状態密度の計算結果を比較することでギャップ構造を決定することができた。これにより、UPt3がトポロジカル超伝導体の一つであることが明らかになったのは大きな成果である。 本研究の成果は査読付論文として学術雑誌に2編が掲載され、2編の掲載が決定している。また、2編の論文を査読付学術雑誌へ投稿中である。今年度は本研究計画の最終年度であるため研究成果の発表に力を入れ、国際会議での発表を3件行ったことで、広く成果を公表することができた。
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Research Products
(13 results)