2010 Fiscal Year Annual Research Report
ホイスラー合金を用いたCPP-GMR素子に対するスペーサー層材料の選択とその効果
Project/Area Number |
10J02520
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中谷 友也 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | CPP-GMR / ホイスラー合金 / スピントロニクス / スピン依存伝導 / 磁気記録 / 磁気ヘッド |
Research Abstract |
超高密度磁気記録用読み取りヘッドおよびスピントルク発振素子としての応用が期待されるCPP-GMR(電流膜面垂直型巨大磁気抵抗)において,強磁性体材料にホイスラー合金Co_2FeAl_<0.5>Si_<0.5>を用いた素子に対する,非磁性体スペーサー層の材料の効果を調査した.非磁性体スペーサー層にAgを用いることで,最大で室温34%,低温80%という大きな磁気抵抗比を得た.これは現在までに報告されているCPP-GMRとしては最も高い値である.理論モデル(Valet-Fert model)により実験データを解析することにより,この系における大きなCPP-GMRは,Co_2FeAl_<0.5>Si_<0.5>/Ag界面における伝導電子の散乱が,大きなスピン依存性をもつためであることを初めて示した.すなわち,アップスピン電子はCo_2FeAl_<0.5>Si_<0.5>/Ag界面における散乱が比較的小さいが,ダウンスピン電子は大きな散乱を受けるため,大きなCPP-GMRが得られる.このことから,Agはホイスラー合金強磁性体を用いたCPP-GMRにおいて,比較的有効なスペーサー層材料であると結論できる. 次に,より高いCPP-GMRを得られる非磁性体スペーサー層材料の探索を試みた.NiAl金属間化合物はCo_2FeAl_<0.5>Si_<0.5>ホイスラー合金と同じ結晶対称性(B2構造)であるため,アップスピン電子の電子構造がこの2材料間で類似していることが予想される.実際にNiAlをスペーサー層に用いたCPP-GMR素子を作製したところ,Agと同等のCPP-GMR値を得た.しかしながらNiAlの短いスピン拡散長により,スペーサー層内でのスピン緩和が問題となることがわかった.
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