2010 Fiscal Year Annual Research Report
人工らせんペプチドを用いた二重らせん構造の構築と不斉触媒への応用
Project/Area Number |
10J02692
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
逢坂 直樹 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ペプチド / キラル / 全属錯体 / 多重らせん構造 |
Research Abstract |
現在までに、キラルな置換基を有するビピリジン誘導体を配位子に用いた有機金属錯体の金属中心の不斉制御は数多く報告されている。しかし、そのような配位子のほとんどは不斉源が金属イオンに近い位置に導入されている。そこで、本研究では、アキラルなアミノ酸である2-アミノイソ酪酸と1-アミノシクロヘキサンカルボン酸からなる様々な鎖長のアキラルペプチド鎖を介してビピリジン-金属部位から離れた位置にキラルなバリン残基を導入したペプチド鎖を有するトリスビピリジン鉄錯体を合成し、それぞれの錯体の金属周りの不斉の制御について検討した。 アセトニトリル中で、ペプチド鎖長が短い錯体はジアステレオ選択性をほとんど示さなかった。一方、より鎖長の長い錯体では金属中心のジアステレオ選択性が劇的に増加した。これは、鎖長が長くなりペプチド鎖が形成するらせん構造が安定に保持されることで、バリン残基の不斉炭素からその不斉情報がより効率よく伝達されたことに起因していると考えられる。NOESY測定の結果から、鎖長の短い錯体ではペプチド鎖はアセトニトリル中で安定ならせん構造を形成していないのに対して、鎖長の長い錯体では安定ならせん構造を形成していることがわかった。さらに、アキラルペプチド鎖のアミノ酸残基をより嵩高い側鎖を有するアミノ酸残基に置換した錯体では、金属中心のジアステレオ選択性が向上した。これは、ビピリジンとペプチド間の結合の自由回転が、側鎖の嵩高さにより制限されるためであると考えられる。
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Research Products
(3 results)