2011 Fiscal Year Annual Research Report
荒廃地におけるパイオニア植物共生微生物の生態と環境修復への応用
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10J02805
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
河原 愛 北海道大学, 大学院・農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アーバスキュラー菌根菌 / 共生 / パイオニア植物 / 土壌酸性度 / 耐酸性 |
Research Abstract |
荒廃地の初期植生成立に重要な役割を果たしているアーバスキュラー菌根菌(AM菌)の生態を明らかにするために、以下の実験を行なった。 1.土壌酸性度がAM菌の群集構造および多様性に及ぼす影響 沖縄県および北海道に分布する酸性~超塩基性土壌に自生しているススキと共生するAM菌の分子生態調査を行い、前年度のフィールド調査における不足データを補った。これらのデータと前年度までに得られたフィールド調査およびモデル実験のデータを合わせて多変量解析を行い、土壌酸性度がAM菌の群集構造を規定する重要な環境因子であること、酸性土壌の菌群は広範なpHの土壌に適応できるgeneralistsであること、および土壌pHの低下に伴いAM菌群の多様性が低下することを明らかにした。 2.酸性土壌におけるススキの生育およびAl^<3+>障害と耐酸性AM菌の効果 ススキに耐酸性および酸性感受性AM菌を接種し、強酸性(pH3.2)および弱酸性(pH5.2)の土壌において栽培したところ、弱酸性土壌ではススキはほとんどAM菌に頼らず生長したが、強酸性土壌では耐酸性AM菌を接種したススキのみの持続的生育が可能となった。一方、ススキの根は、AM菌接種に関わらず、強酸性土壌では弱酸性土壌と比べて有意に根長が短く、根端にAl^<3+>が多く集積して組織が激しく損傷していることが分かった。これらの結果から、耐酸性AM菌の菌糸が損傷したススキの根に代わる養分吸収経路を提供していることが示唆された。 3.ススキのリン酸輸送体遺伝子の探索 AM菌接種および非接種のススキを弱酸性土壌において栽培し、その根において発現している遺伝子(mRNA)情報の中から、AM菌接種に対する発現パターンが異なると予想される3つのリン酸輸送体相同遺伝子を見つけた。今後は、これらの遺伝子とAM菌のリン酸供給量との関係を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
土壌酸性度とAM菌群集の関係を明らかにするためのフィールドおよびモデル実験は概ね終了し、論文をまとめる段階にまで進んだ。また、酸性土壌におけるAM菌の効果を調べる実験も進行した。加えて、AM菌のリン酸供能力の評価方法を確立するための実験にも着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに行った土壌酸性度とAM菌群集の関係を調べたフィールドおよびモデル実験の内容をまとめて、国際雑誌に投稿する。また、酸性土壌におけるAM菌の効果を調べる実験については追加実験を行う。AM菌のリン酸供能力の評価方法を確立するための実験については、ススキのリン酸輸送体相同遺伝子の発現量がリン酸供給量と相関関係にあるかどうかを調べる。
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Research Products
(5 results)