2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規シナプス伝達修飾分子LGI1/ADAM22/23の構造基盤の解明
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10J02876
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
横井 紀彦 生理学研究所, 細胞器官研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | シナプス可塑性 / LGI1 / ADAM22 / てんかん / 蛋白質複合体 / AMPA型グルタミン受容体 / 海馬 / 神経回路 |
Research Abstract |
本研究では、てんかん原因分泌蛋白質LGI1のシナプスにおける生理的機能の解明を個体、組織、分子レベルの縦断的解析により試みている。我々はヒトで報告されたLGI1のてんかん変異体、特に単一アミノ酸変異に着目した。アミノ酸変異による蛋白質構造、および蛋白質-蛋白質相互作用への影響が、LGI1の生理的な機能に関与すると考えられるためである。これまでに我々はLGI1変異体の分泌活性を網羅的に検討し、多くがLGI1の分泌を阻害し、変異体A,Bが分泌活性を保持していることを見出した。そこで、生理機能への変異の影響を評価するため、分泌阻害型の変異体X曳分泌型の変異体Aのトランスジェニック(Tg)マウスを作成した。LGI1ノックアウト(KO)マウスのてんかん発作がこれらTgマウスによって機能回復されなかったため、これらTgマウスは疾患モデルマウスといえる。野生型と異なり、変異体XはTgマウス脳内で小胞体に局在していた。変異体X特異的な結合蛋白質として、小胞体関連分解(ERAD)に関する蛋白質を同定した。また、蛋白質の折り畳みを促す小分子(化学シャペロン)により培養細胞からのLGI1変異体Xの分泌が促進された。以上の結果から、LGI1の分泌を阻害する変異によるてんかん発症は、LGI1のconformational diseasesであると考えられる。一方、変異体AではADAM22とLGI1変異体との結合が特異的に阻害されていた。この結果はLG1/IADAM22蛋白質相互作用の低下が、LGI1を介したシナプス伝達の機能阻害を起こし、てんかんを誘因ことを示唆する。以上の2つのTgマウスの結果から、LGI1の分泌、およびADAM22との結合の重要性が示された。このようにLGI1変異体マウスを蛋白質レベルで解析し、てんかんの病態機構、および、LGI1の生理機能を明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究ではLGI1てんかん原因変異体のトランスジェニックマウスを作製し、脳内でLGI1変異体のADAM22との結合がLGI1野性型に比べ特異的に減少していることを見出した。この結果はLGI1/ADAM22蛋白質相互作用の低下が、LGI1を介したシナプス伝達の機能阻害を起こし、てんかんを誘因することを示唆する。このような結果はマウス作製前には予想されなかったことでありぐ本研究は計画以上の成果を上げていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではLGI1単一アミノ酸変異体のトランスジェニックマウスの解析により、LGI1結合蛋白質と、てんかん発症の関連について明らかにしつつある。マウスを作製していない変異体でも、in vitroの実験からアミノ酸変異で異なる蛋白質複合体の形成が示唆されている。今後はこれら変異体のトランスジェニジクマウスを作製、解析し、複数の変異体の結果を統合することで、LGI1を焦点とするシナプス伝達の分子機構を明らかにする。同時に変異に寄る機能阻害をレスキューする手法を小分子、ペプチド、アプタマー等を手掛りに探索する。一方、組織におけるLGI1機能の焦点を、細胞特異的プロモーターによる細胞特異的なLGI1の発現により、LGI1ノックアウトマウスのてんかんがレスキューされるかを指標に網羅的に探索していく。
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