2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規シナプス伝達修飾分子LGI1/ADAM22/23の構造基盤の解明
Project/Area Number |
10J02876
|
Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
横井 紀彦 生理学研究所, 細胞器官研究系, 特別研究員(PD)
|
Keywords | シナプス可塑性 / LGI1 / ADAM22 / てんかん / 蛋白質複合体 / AMPA型グルタミン受容体 / 海馬 / 神経回路 |
Research Abstract |
LGI1は、ヒトでてんかんを引き起こす30以上の変異が報告され、また、辺縁系脳炎を引き起こす自己抗体の主要な標的であることが知られている。つまり、LGI1がヒトの神経活動に重要な役割を担うことは明白である。これまでに我々は、LGI1ノックアウト(KO)マウスが生後三週間以内にてんかん発作により全て死亡すること、LGI1がシナプス膜貫通蛋白質ADAM22、ADAM23と複合体を形成すること、そして、AMPA型グルタミン酸受容体の機能制御を行うことを見出してきた。しかしながら、LGI1の機能阻害とてんかん発症の分子病態メカニズムは未だ明らかではなかった。申請者はヒトでてんかんを引き起こすLGI1変異体の分泌活性を網羅的に検討し、分泌型と分泌阻害型に分類した。次に、生理機能への変異の影響を評価するため、分泌阻害型、分泌型変異体LGI1を発現するトランスジェニックマウスを作成した。LGI1変異体のヘテロ接合型マウスは、ペンチレンテトラゾールに対する痙攣感受性が野生型に比べ高かったことから、ヒトのてんかんモデルマウスとなることが示された。次に、マウス脳内でのLGI1変異体の機能欠損を生化学的、組織化学的に調査した結果、野生型LGI1がシナプス間隙へ分泌され、ADAM22、ADAM23と結合するのに対し、分泌不全型変異体は構造異常のために小胞体に留まり、最終的には分解されること、分泌型変異体はADAM22との結合が選択的に阻害されていることを見出した。以上の結果はLGI1の変異によって引き起こされるてんかんが、分泌不全、タンパク間相互作用不全を原因とする構造病(conformational disease)であることを示し、LGI1/ADAM22による脳の興奮性シナプス伝達制御機構の重要性が示された。さらに分泌不全型変異体の培養細胞からの分泌が、ある小分子により促されることも見出した。これは、LGI1変異によって引き起こされるてんかんの治療法に知見を与えるものである。
|
Research Products
(4 results)