2011 Fiscal Year Annual Research Report
機械学習を適用した機能的磁気共鳴画像法によるエピソード記憶定着・想起の結果予測
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10J02882
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 喬光 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 海馬 / 側頭葉 / 長期記憶 / 機械学習 / fMRI |
Research Abstract |
本研究の目的は、機械学習を用い、神経活動からエピソード記憶の定着・想起を予測することを通して、長期記憶の定着・想起の成立のために十分な神経基盤の条件を解明することにあった。 平成22年度の研究では海馬の神経活動から記憶の定着度を予測することに成功している(Watanabe,et al.Neuro Image)。平成23年度は、この成果を国際学会(ASSC 15)で発表するとともに、新規開発した機械学習を用いて、海馬だけではなく大脳側頭葉皮質が記憶の定着・想起にどのように関わっているのかを調べた。 (1)まず健常者43人を募って約2ヶ月に及ぶ心理実験を行った。この実験では初めに各被験者に写真の組を覚えてもらった(Remote記憶)。(2)その後約2ヶ月後、同じ被験者に、同数の新しい写真の組を覚えてもらった(Recent記憶)。その直後に機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、これらRemote記憶・Recent記憶を被験者が想起している時の脳活動を測定した。(3)こうして計測された脳活動を解析することでまず、Remote記憶は写真のカテゴリー毎に後側頭葉の別々の箇所に定着されることが判明した。さらに、前側頭葉は、記憶のカテゴリーにかかわらずRemote記憶の想起に関わっていた。一方、海馬はRecent記憶の想起に関係があった。(4)新規開発した機械学習に基づく解析によって、これらの領域間ネットワークが明らかになった。それによると、記憶は海馬を経由してカテゴリー別に後側頭葉の特定の箇所に定着する。その記憶は、いったん前側頭葉を経由することで想起される。 この長期記憶の定着・想起に関する側頭葉全体にわたるネットワークは、脳領域間の相互作用を機械学習を用いて解析することで初めて明らかになったものである。現在この結果は査読付き国際学術誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成22年度に達成した事項を学会等で発表するとともに、その結果をさらに発展させるための研究を遂行することができた。その新たな結果もすでに査読付き国際学術誌に投稿中である。結果として、記憶の定着想起に関する神経基盤解明という目的がより高い次元で達成できる可能性が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上記の研究を国際学術誌に発表し、国際学会でその結果について他の研究者らと意見を交換することを目標とする。さらに、今回開発した機械学習に基づいた解析方法を睡眠中の脳活動の解析に適用することで、記憶がいかに定着するかの研究を深化させる予定である。
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Research Products
(5 results)