2010 Fiscal Year Annual Research Report
女性が語る歴史 -ユダヤ系メキシコ詩人Gloria Gervitzをめぐって-
Project/Area Number |
10J02908
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仁平 ふくみ 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | メキシコ / ユダヤ人 / 女性 / 移住 / 詩 / 記憶 / 母 |
Research Abstract |
本年度の最も大きい成果としては、対象としている詩人Gervitzにメキシコで直接インタビューしたことが挙げられる。詩の中での描写について細部までも説明を得ることができた。本人から入手困難な資料、また詩の各国語翻訳の過程についての情報を得られたことも収穫である。また、詩の初期に重要であった「ユダヤ性」というアイデンティティーは「詩人」というものに移行しつつあることを確認できた。その移行の在り方は、書くことでしか得られないものであり、詩人自身の母の死、英語で書く手法の発見とも関わっていると考えている。詩の翻訳の叩き台としての第一稿を作成し、Gervitzにも渡すことができた。より洗練された日本語にしていくことが課題である。詩の読解に関しては、インタビューと資料によりかなり深まった。 また、メキシコという、国家の歴史と文学が密接に関わっている土壌で、女性であることについても考察しなくてはならないと考えたため、メキシコにおける女性の表象についても研究をすすめている。今年度は、Gervitzがインタビューの中でも言及したJuan Rulfoの女性の表象に注目し、論文を提出した。 3月には、本年度の考察のまとめとして東京大学での英語の学会に参加した。発表では、女性性、母との葛藤、記憶のねつ造を中心的な軸とした。女性という受動であるような性が行うそれを逆手に取りながらの自己の探索、母の記憶として受け継いでいるものが実は自分がねつ造したものではないかという葛藤を扱った。参加者や司会の先生から鋭いご指摘をいただいた。発表の場を持ち、そして聴衆から彼女の置かれた特異な環境と特異な創作態度についての興味を引き出すことに成功したことは前進といえるだろう。より発展させた形で次年度、論文というかたちで発表する予定である。
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