2011 Fiscal Year Annual Research Report
マサバ、マアジの飼育実験系を用いた各種繁殖パラメータの解明および母性効果の検証
Project/Area Number |
10J02973
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入路 光雄 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マサバ / ホルマリン固定卵巣標本 / バッチ産卵数 / 排卵後濾胞 / マアジ / 飼育実験 / 産卵誘導 |
Research Abstract |
1)ホルマリン固定したマサバ卵巣標本における核移動期卵の簡易識別法の開発: 前年度に検討した手法(ベンジルアルコール:安息香酸ベンジル=1:1の混合液に浸漬する)により、10%ホルマリンに長期期間保存された卵母細胞の細胞質が透明化できることが分かった。本年度は、卵母細胞中の卵核胞(GV)を選択的に染める染色法を検討した。結果、ギムザ染色液またはズダン黒B染色液によりGVが選択的に染色されることが分かった。以上、染色剤と透徹剤を組み合わせることで、10%ホルマリン固定したマサバ卵巣標本中の核移動期卵を簡易に識別する方法を開発した。この手法は、天然で採集されたマサバの卵巣標本からのバッチ産卵数(吸水卵または核移動期卵の計数により算出)推定の簡便化につながるものである。 2)PAS(Periodic acid-Schiff)染色によるマサバ排卵後濾胞(POF)の識別法の検討: マサバの産卵頻度推定は、卵の発達ステージおよびPOFの退行ステージを組織学的に観察して行われている。本研究では、POFの識別にPAS染色が有効かどうか検討した。排卵後の経過時刻の異なるマサバより卵巣を採取し、組織切片作成後、ヘマトキシリン-エオシン(HE)染色またはPAS染色を施した。PAS染色によりPOFの基底膜が強く染色され、POFの識別が容易なことが明らかになった。 3)マアジの飼育実験系確立における親魚の適正評価: マアジ飼育実験系は産卵時刻や産卵頻度といった資源評価に必要なパラメータの検討に有効と考えられるが、産卵誘導に適した親魚(卵黄形成完了個体)の入手が困難である。本研究では、海面生簀内で飼育した蓄養マアジと、一本釣りによる低ストレスの天然マアジを産卵期に採集した。卵巣組織を採取し、退行のない卵黄形成卵をもつ雌親魚にGnRHaを投与し、産卵を誘導した。蓄養親魚の64%で卵黄形成が進行し、うち28%で卵の退行が認められた。天然親魚の卵黄形成個体は87%で、うち6%が退行卵をもっていた。以上、マアジでは長期飼育環境が卵黄形成を阻害していることが伺われた。また、適切な親魚選別により産卵を誘導することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に基づく「ホルマリン固定したマサバ卵巣標本における核移動期卵の簡易識別法の開発」「POFの識別法の検討」「マアジ飼育実験系の確立」は順調に進行している。加えて、これら種々の飼育実験より得られたサンプルを利用し、マサバおよびマアジの生殖周期における内分泌的解析を進め、生殖腺刺激ホルモンの有する機能も明らかとなってきた(Nyuji et al.,2011,2012)。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に基づき、マサバの各種繁殖パラメータ(バッチ産卵数、産卵頻度)の算出方法の検討を進める。また、マアジの飼育実験系の確立を目指す。マアジの飼育実験系確立における適正親魚の選択方法はある程度確立され、入手方法が問題であることが分かったため、親魚の入手方法について検討を進める。同時に、飼育下で卵黄形成不全が起こる要因を内分泌的に解析する。また、マサバおよびマアジの飼育実験により種々の生殖状態のサンプルが得られることを利用し、生殖腺刺激ホルモンの機能解析を中心に内分泌的解析も進める。内分泌的解析により、飼育実験下における種々の繁殖パラメータおよび母性効果を決定する要因を考察する。
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Research Products
(6 results)