2010 Fiscal Year Annual Research Report
線虫初期胚を用いた細胞質流動ダイナミクスの「細胞質の物性依存性」の解明
Project/Area Number |
10J03126
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
庭山 律哉 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 細胞生物学 / 細胞質流動 / シミュレーション / 画像解析 |
Research Abstract |
私は、細胞質の固体的性質が細胞質流動の動態に影響するか否かについて検証を進めてきた。モデル系として、双方向性の細胞質流動が起きる線虫C. elegans-細胞期初期胚を用いてきた。学術振興会研究員として研究を開始する平成22年4月の前までに、私は細胞質を固体的に表現する粘弾性体モデルと流体的に表現する粘性流体モデルの2つのモデルを用いた二次元流動シミュレーションと実験的に観測した細胞質流動の速度分布を比較してきた。だが二次元系のシミュレーション結果と三次元空間内で起こる実際の流動の観測データには大きな解離が見られた。 そこで平成22年4月から平成23年3月までの研究計画では、三次元空間における流動シミュレーションのソフトウェアの構築を予定した。予定通りに粘弾性体モデルと粘性流体モデルの両方の三次元シミュレーション用ソフトウェアを開発した。特に粘性流体のシミュレーションソフトウェアについては、実際の細胞と時空間スケールを合わせたシミュレーションを可能とすることに成功した。構築した粘性流体の三次元シミュレーションのソフトウェアで線虫一細胞期初期胚の細胞質流動をシミュレートしたところ、部分的には数十%ほど実験データの速度分布と速度が一致しない部位があるものの、二次元シミュレーション時よりも高精度に観測データを説明することに成功した。一方で、粘弾性体モデルによるシミュレーションはまだ行っておらず、粘弾性体モデルを用いた方がより観測データを詳細に説明できるか否かまでは調べていない。現時点で、粘性流体モデルである程度の観測データの説明に成功した結果をまとめて、学術雑誌に投稿した。これは線虫初期胚の細胞質流動が細胞質の流体力学的性質によって媒介された流動であることを示唆する初めての成果である。
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