2010 Fiscal Year Annual Research Report
シジミチョウ-アリ共生系における相利共生維持機構の解明
Project/Area Number |
10J03146
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
北條 賢 国立大学法人琉球大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 相利共生 / 社会性昆虫 / コミュニケーション / 行動 / 学習 |
Research Abstract |
本研究は、シジミチョウとアリの相利共生が維持されるプロセスとその生理学的メカニズムの解明を目的としている。異なる生物同士がお互いに協力し合う「相利共生」は、自身は何も与えずに利益を得る「裏切り者」の出現により崩壊する。そのため、相利共生の維持には協力的なパートナーを正確に認識する機構が必要である。本年度はアリによる共生型シジミチョウの認識機構を中心に研究を行った。 アミメアリは共生型シジミチョウであるムラサキシジミ幼虫から蜜を受け取る経験を通して、幼虫に対する随伴行動を獲得する。ムラサキシジミの蜜成分をHPLCにより分析・同定し、得られた結果を基に人工的に蜜を調整した。人工蜜とムラサキシジミ幼虫の体表化学物質を用いたアリの連合学習実験を行うと、ムラサキシジミ幼虫の体表化学物質を塗布したガラスビーズと人工蜜を同時に提示すると、アリは処理ビーズに対する随伴行動を強化した。このことから共生型シジミチョウ幼虫の体表成分をアリが学習・認識することで、両者の相利共生が成立・維持されていることを示した。 また、非共生型シジミチョウ(ベニシジミ)の匂い成分を用いてアリの学習実験を行うと、ベニシジミの体表化学物質とムラサキシジミの人工蜜を用いた学習実験ではアリの随伴行動の強化は見られなかった。さらに共生型シジミチョウと非共生型シジミチョウの匂い成分をGC-MSを用いて分析した結果、共生型では複雑な炭化水素の混合物で構成されていたのに対し、非共生型シジミチョウの体表成分は成分数も少なく、単純な構造の炭化水素で構成されていた。これらの結果は,アリへの直接的な報酬だけでなく、学習可能な匂い成分の合成・分泌が相利共生の成立に必要であることを示している。
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