2012 Fiscal Year Annual Research Report
シジミチョウ-アリ共生系における相利共生維持機構の解明
Project/Area Number |
10J03146
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
北條 賢 琉球大学, 農学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 相利共生 / 社会寄生 / コミュニケーション / 社会性昆虫 / 学習 / 行動 |
Research Abstract |
シジミチョウはアリと片利・相利・寄生などの様々な共生関係を結んでおり、シジミチョウの多様性はアリとの共生によりもたらされたと考えられている。このような共生関係の多様性は、種間で交わされるコミュニケーションの多様性に支えられていると想像されている。そこで、今年度はこれまでの研究成果を更に発展させ、シジミチョウーアリ共生系におけるコミュニケーションの多様性と進化機構を明らかにすることを目的に、6月より米国ハーバード大学・進化生物学分野のナオミ・ピアス教授のもとで研究を行った。米国では主に、高い種特異性を示すヒスイシジミJalmenusとIridomyrmexアリの絶対相利共生系およびゴマシジミMaculineaとクシケアリMyrmicaの社会寄生系を用いてアリのシジミチョウ幼虫認識プロセスを調べ、これまで申請者が行なってきた日本国内種の事例と比較を行った。アリに対するシジミチョウ幼虫の経験効果をビデオ撮影・PCプログラムを用いて解析した結果、Jalmenus-Iridomyrmex系ではムラサキシジミと同様に学習の効果が見られた。一方、ゴマシジミ-クシケアリの系では経験に伴うアリの行動変化は見られなかったが、シジミチョウ幼虫と女王に対する働き蟻の行動が似ている傾向が見られ、クシケアリは経験の有無にかかわらずゴマシジミ幼虫を受け入れられた。これらの結果より、相利共生系ではシジミチョウから提供される報酬に応じてアリが見返りを与えることで協力的な関係が維持されているが、寄生系ではシジミチョウ幼虫によるアリの行動操作が示唆された。また現在はアリの脳の神経伝達物質(脳内アミン)の測定およびRNAseqによる遺伝子発現動態を調べる準備をしており、種間コミュニケーションのより詳細なメカニズムも明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は当初の計画を更に発展させることを目的に海外の研究室にて研究を行い、第一線で活躍する研究者との交流、共同研究を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に今後の発展に向けた海外訪問に費やすことができたため、この経験を生かし今後の共同研究に繋げていきたいと思う。
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