2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジャスモン酸12位水酸化酵素の同定及び、傷害応答性移動シグナル分子の解明
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10J03176
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
北岡 直樹 北海道大学, 大学院・農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 植物ホルモン / ジャスモン酸 / シトクロムP450 / 不活性化経路 / 傷害応答 |
Research Abstract |
昨年度ジャスモン酸イソロイシン(JA-Ile)12位水酸化酵素としての機能を明らかにしたCYP94B3の基質特異性を調べ、変異株における生成物と基質の内生量を測定し、この酵素が、JA-Phe及び、JA-Valの水酸化活性を有する事を明らかにした。変異株cyp94b3と野生株をJA-Ile存在下で育成したところ、変異株cyp94b3でより強くJA-Ileの効果が観察された。これは変異株cyp94b3においてはJA-Ileを不活性化することができず、より多くのJA-Ileが植物体内に蓄積したためと考えられる。12位の水酸化がJA類の不活性化として働くことを指し示すために、JA-Ile、JA-Val、JA-Phe及び、それぞれの12位が水酸化された化合物の生物活性を、シロイヌナズナ根伸長阻害試験を用いて評価した。その結果、JA-Val、JA-PheがJA-Ile様の作用を示すこと、すべての化合物において生物活性が12位の水酸化により低下する結果が得られた。以上結果より12位の水酸化がJAアミノ酸結合体の不活性化に寄与している事が示された。しかしながら、12-hydroxyJA-IleもJA-Ileと比較するとその生物活性は低いものの、JA-Ile様の生物活性を示した。このことはさらに代謝されることの重要性を指し示すものである。12-hydroxyJA-Ileのさらなる代謝経路として、配糖化、さらに酸化、硫酸エステル体へと変換されると予想し、それら内生量の分析に使う、標準物質を化学合成した。植物ホルモンの活性は生合成と不活性化によって調節されると考えられている。植物ホルモンの一種ジャスモン酸に関しては生合成に関しては数多くの知見がある一方で不活性化に関する知見は少なく、我々の研究によって主要な不活性化経路が明らかとなったことにより、「JA-Ile蓄積後のシグナル応答」の分野における進展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、平成22年度にJA-Ile12位水酸化酵素としての働きを示唆したCYP94B3の機能を更に調査した。しかしなら、アメリカのグループにより、同様の結果が記載された論文が発表されたことより、当初計画していた変異株の作成等は行わず、12-hydroxyJA-Ileのさらなる代謝物の探索と研究の方向を変えた。また、他の植物ホルモンとの相互関係におけるCYP94B3の機能も調査したが、予測していた結果は得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
JA-Ileの完全な不活性化の解明を目指し、合成した12-hydroxyJA-Ileのさらなる代謝物の探索を行う予定である。また、植物界における12位の水酸化から始まるJA-Ileの不活性化経路の普遍性を調べるため、様々な植物種におけるJA-Ileの代謝物の濃度を調べる予定である。
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Research Products
(7 results)