2011 Fiscal Year Annual Research Report
光合成系の温度馴化の分子メカニズム : ルビスコのキネティクス特性と活性制御機構
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10J03271
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢守 航 東北大学, 大学院・農学研究科, 特別研究員(PD) (90638363)
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Keywords | 光合成 / 温度応答 / ルビスコ / アクチベース / 光活性化 / 電子伝達 / 高温 |
Research Abstract |
高温における光合成速度を決定する要因の1つとして、ルビスコ活性化率の減少が挙げられる。高温でルビスコ活性化率が減少するメカニズムとして、ルビスコ活性化の調節を担うアクチベース量や熱安定性が律速要因だと提案されている。そこで、その仮説を検証するために、1)野生株、2)アクチベース量を増加した形質転換体、3)アクチベース量を減少した形質転換体を用いて、ルビスコ活性化率と光合成速度の温度応答を調べた。25℃以下では、アクチベース量の増加・減少に関わらず、定常状態におけるルビスコ活性化率と光合成速度は変化しなかった。一方で、40℃では、アクチベース量と共にルビスコ活性化率と光合成速度が変化する傾向にあった。これは、高温領域におけるルビスコ活性化の制御には、アクチベース量が重要な要因の1つであることを示す。 また、アクチベース活性は「光環境が弱光から強光に変わった時の光合成誘導(光合成の活性化速度)」に関わることが提案されてきた。そこで、上記の植物体を用いて、アクチベース活性が光合成の誘導に貢献しているのかを解析した。測定温度に関わらず、アクチベース量の変化と共に光合成の活性化速度が変化することが分かった。また、光合成の活性化速度とルビスコ活性化速度は同調していた。これらの結果から、アクチベース量が光合成の誘導を律速する因子であることが明らかとなった。 高温における光合成速度の律速要因を調べることは、温暖化する地球において、植物の光合成能力を増大させるターゲットとして重要な知見となる。本課題によって、アクチベースは定常状態におけるルビスコ活性化状態や光合成速度の律速因子というよりも、むしろ、変動する光環境下における光合成の誘導に重要な要因であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・研究実施計画に基づき、研究を行った。 ・これらの研究成果は国際学会で発表され、多くの研究者に高い評価を頂いた。 ・今回の研究成果がPlant Journalに受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研研究課題1年目・2年目の研究結果、定常状態におけるルビスコ活性化制御はアクチベースだけによるものではなく、光合成電子伝達(特にサイクリック電子伝達)が関与する可能性が出てきた。これらの知見は非常に新しいものであり、ルビスコ活性化制御メカニズムを解明するためにも、研究を進めたいと考えている。
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