2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J03295
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本橋 隼人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダークエネルギー / インフレーション / ブラックホール / ニュートリノ / 大規模構造 / 修正重力理論 |
Research Abstract |
本研究ではダークエネルギーのモデルとして修正重力理論の立場をとり、その理論的な帰結を導き出し、観測的に区別する指標を見出すことに主眼をおき解析を行ってきた。今年度の研究の成果は、大きく分けて以下の四つに区分される。 第一の研究は、f(R)重力理論の理論的な側面に着目し、描かれる宇宙の将来像を分類したことである。これは前年度までの研究で判明したファントムクロッシングという現象をさらに発展させたもので、ダークエネルギーの振る舞いを特徴付ける状態方程式パラメータにおける振動現象の分類法を確立した。 第二の研究は、質量を持ったニュートリノの効果を考慮したもとでの密度揺らぎの時間発展の数値計算である。私は公開ボルツマン・コードMGCAMBをf(R)重力理論に対応できるように書き換え、このプログラムを用いて宇宙マイクロ波背景放射および物質密度揺らぎのパワースペクトルをシミュレーションした。本研究の結果は将来的な銀河サーベイによる大規模構造探査で理論を区別するための基準となり得るものである。 第三の研究は、f(R)重力理論におけるインフレーションとダークエネルギーの統一的記述の研究である。インフレーションは宇宙が加速膨張するという点でダークエネルギーと同様の特徴を持つ。本研究により従来は別々の機構と考えられていた両者を一つの理論で説明することができることを示した。 第四の研究は、パリティを破るチャーン・サイモンズ項を導入した重力理論におけるブラックホール摂動論である。先行研究では場の方程式系が複雑となるため困難とされてきた解析であったが、私は作用の段階において簡約化を行う新たな方法でこの問題を解決した。 以上の研究により、修正重力理論に基づいた加速膨張宇宙の理解がより深いものとなり、観測的に区別する方法を提案した。また同時に、さらなる研究課題も発見され、次年度以降の研究につながるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではf(R)重力理論における背景時空および密度揺らぎの時間発展を調べる予定であったが、この研究の過程で、質量を持ったニュートリノとの相殺効果が判明し、重要な帰結を導くことができた。また、同じ加速膨張を持つという点でダークエネルギーとインフレーションをf(R)重力理論において統一的に記述する試みやプラックホール摂動論も新たな研究であり、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、背景時空まで含めてf(R)重力理論の修正を取り入れたボルツマン・コードを作成し、マルコフ連鎖モンテカルロ法を実装する。これにより、計算機上に仮想的な宇宙を多数シミュレーションし、観測データと比較して最もよく現実の宇宙を記述する理論を探索することが可能となる。ニュートリノ質量に関しても新しい制限を課す。さら。にインフレーションとダークエネルギーの統一模型から予言される揺らぎのスペクトルを詳しく調べ、その観測的特徴を見出す。同時に、ブラックホール摂動論を用いて小スケールにおける修正重力理論の兆候を探る研究も継続し、近年注目を集めている最も一般的なスカラーテンソル理論における解析を行う。
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Research Products
(13 results)