2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J03295
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本橋 隼人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ダークエネルギー / 修正重力理論 / 大規模構造 / ニュートリノ / インフレーション / ブラックホール |
Research Abstract |
本研究ではダークエネルギーの理論模型として修正重力理論の立場をとり、その理論的な帰結から観測的に区別する指標を見出すことに主眼をおき解析を行ってきた。今年度の研究成果は多岐に渡るため、主な成果として一つの研究について詳しく述べる。 今年度の主な成果は、f(R)重力理論で1電子ボルトのステライル・ニュートリノを考慮した解析である。近年のニュートリノ振動実験から、非常に軽い質量を持った3世代のニュートリノの他に、1電子ボルト程度の質量を持つステライル・ニュートリノの存在が示唆されている。宇宙論的観点から考えると、このような粒子は光速に近い速度で運動し、かつ重力相互作用を及ぼすため、銀河の大規模構造のタネとなる物質密度揺らぎの成長を抑制する働きを持つ。一方、我々は前年度までの研究により、f(R)重力理論では密度揺らぎの成長が促進され、ニュートリノによる抑制と相殺することを示した。そこで我々は1電子ボルトのステライル・ニュートリノの存在を仮定したもとで数値計算を行い、アインシュタインの一般相対論においては密度揺らぎが銀河団存在量の観測から得られている値まで成長しない一方で、f(R)重力理論においては密度揺らぎが観測値まで成長することを突き止めた。同時に、f(R)重力理論は宇宙マイクロ波背景放射と銀河のパワースペクトルの観測データをよりよく再現できることを明らかにした。これにより、将来の素粒子実験により1電子ボルトのステライル・ニュートリノの存在が確立すれば、修正重力理論が優位になる。 以上の他に、f(R)重力理論によるインフレーション後の再加熱の解析、一般化ガリレオン理論におけるブラックホール摂動の安定性解析、有質量重力子理論での加速膨張解の発見、ストキャスティック法を用いたインフレーションの相関関数の導出、新たな非ガウス性整合関係を持つインフレーション模型の構築の研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではf(R)重力理論における背景時空および密度揺らぎの時間発展を調べる予定であったが、その過程において質量を持ったニュートリノとの相殺効果が判明し、最新の素粒子物理学にまで及ぶ横断的な研究を遂行することができた。また、ダークエネルギーに留まらず、インフレーション、ブラックホール摂動論など幅広いテーマに渡って研究することができ、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においては、f(R)重力理論によるダークエネルギーとインフレーションの理論模型を考察する。今年度の研究成果では再加熱において質量がない粒子の生成を考えたが、今後は質量を持った粒子生成も考慮する。ブラックホール摂動論の研究も継続し、最も一般的なスカラーテンソル理論である一般化ガリレオン理論での偶パリティ摂動の安定性解析と、パリティを破るチャーン・サイモンズ重力理論での高速回転ブラックホール解の構成を行う。またインフレーション理論の研究においては、今年度構築した新たな非ガウス性整合関係を持つインフレーション模型をさらに押し進め、より広いクラスのインフレーション模型を解析する方針である。
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Research Products
(13 results)