2012 Fiscal Year Annual Research Report
分位点回帰の非線形モデルの開発、推定と時系列データへの応用についての研究
Project/Area Number |
10J03304
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
小林 弦矢 神戸大学, 経営学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近似ベイズ計算法 / 回帰モデル / 変数選択 / 変数選択 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 安定分布 |
Research Abstract |
分位点回帰分析を非線形モデルや時系列モデルへ適用するにあたり・近年回帰係数に対する事前分布の選択についてその重要性が注目されている。本研究では、複雑なデータへの分位点回帰モデルの適用をより有用なものとするため、回帰係数の事前分布として、安定分布を基礎とした対称アルファ安定(symmelric alPha-stable)分布と一般化対称リニクlgeneralized symmelric Liunik)分布のふたつの事前分布を取り上げることにした。その理由として、(1)これらは特性関数によって定義される確率分布であり、正規分布、コーシー分布、ラプラス分布、幾何安定分布などを特殊な場合として含んでいること、(2)どちらも中心にピークを持ち、正規尺度混合表現によって衷すことができること、(3)分布の裾の厚さを特性指数と呼ばれるパラメータによってコントロールできるため、変数選択などを行う場合に非常に有用であることなどが挙げられる.線形回帰モデルの回帰係数に対して対称アルファ安定事前分布や一般化対称リニク事前分布を仮定した場合、ベイズ分析で必要となる事後分布を明示的に導出することができない.そこで第3年度目は,マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法にもとづく推定方法の開発を中心に研究を進めた。その際、事前分布の裾の厚さは変数選択などのパフォーマンスに大きな影響を与えることが知られていることから、特性指数の値をデータから推定し、適応的に変数を選択できることを目指した・特性指数の推定にあたっては、両事前分布とも解析的に確率密度関数が得られないという数値計算上の問題点がある。 本研究では、近似ベイズ計算(approximate Bayesian computation, ABC)法を採用し、困難な密度関数の直接の評価を回避する簡便な推定方法を提案した。本研究で提案するABC法では、現在のMCMCの回帰係数の値と事前分布から発生させられた値とが近くなるような特性指数の値を事後分布からのサンプルとして採用する。ABC法による特性指数の事後分布の近似が事前分布のパフォーマンスにどのような影響をあたえるかを調べるために、数値実験を行った。数値実験の結果より、事前分布のパフォーマンスを上げるためには、特性指数の事後分布の近似をより正確に行うようにABC法のチューニングパラメータを選択する必要があることが明らかとなった。さらに、実際のデータを用いて本研究で採り上げるふたつの事前分布と既存のいくつかの事前分布との比較も行った。対称アルファ安定分布は既存の事前分布と同等のパフォーマンス、一般化対称リニク分布は同等以上のパフォーマンスをあげることがわかり、これらの事前分布の有用性を示すことができた。
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