2010 Fiscal Year Annual Research Report
ポリヤコフ・ループ効果を取り入れた格子QCDの強結合展開に基づく相図の解明
Project/Area Number |
10J03314
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中野 嵩士 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 格子QCDの強結合展開 / 有限結合定数効果 / ポリヤコフ・ループ効果 / QCD相図 / カイラル相転移 / 非閉じ込め相転移 / 中間的密度相 / 臨界点 |
Research Abstract |
有限温度・有限密度における格子量子色力学(QCD)相図の性質を理解するために、第一原理に基づく格子QCDの強結合展開を用いて研究を行った。強結合極限を超えて、有限結合定数効果を評価することは現実のQCD相図を理解するうえで非常に重要である。 格子QCDの強結合展開に非閉じ込め相転移の秩序変数であるポリヤコフ・ループの効果を取り入れ、それに対するQCD相図への影響を調べた。具体的には、カイラル相転移と非閉じ込め相転移に関して調べた。ポリヤコフ・ループ効果の評価は、これら2つの相転移を同時に議論することが可能になるという観点から必要不可欠である。 具体的結果としては、ポリヤコフ・ループ効果により、(1)カイラル凝縮が高温領域で減少しやすくなること(2)カイラル相転移線が低温方向に下がること(3)ゼロ密度において、カイラル相転移温度が第一原理数値計算であるモンテカルロ計算に近いこと(4)ゼロ密度において、カイラル相転移と非閉じ込め相転移がほぼ近い温度であることが挙げられる。 これらの研究において、第一原理に基づいてカイラル相転移と非閉じ込め相転移を含む定式化を行い、QCD相図の性質を理解を進めた。 また、格子QCDの強結合展開における高次項についても評価を行った。具体的内容としては、(1)低温・高密度領域において中間的密度相があること(2)臨界点が高温・低密度側へ移動することが示唆された。以上の結果は、QCD相図におけるポリヤコフ・ループ効果の重要性を示し、現実のQCD相図の性質を明らかにしていくうえで、非常に重要な結果であると考えられる。
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