2010 Fiscal Year Annual Research Report
生物殻におけるMg同位体の分別機構の解明と古海洋学の新規間接指標の開発
Project/Area Number |
10J03322
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 寿紘 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マグネシウム同位体比 / 古環境プロキシ / MC-ICP-MS / 国際深海掘削計画(IODP) / 深海サンゴ / 堆積物コア |
Research Abstract |
申請者は炭酸カルシウムと水試料からのMg単離手法を開発し,高知コア研究所のMC-ICP-MSを用いた同位体比測定によって生物殻のMg同位体比の測定を行った.この結果,深海サンゴの骨格において水温とMg同位体比の間に明瞭な相関が認められた.生物殻は生物の成長に伴って付加成長するため生息時の時系列の環境情報を記録しており,この新しい知見は深海サンゴの骨格を用いて,地球の気候条件などを知るためにもっとも重要なパラメータである過去の水温の記録を復元できる可能性を示すものである.この成果はEarth and Planetary Science Letters誌に投稿中である. また,海洋におけるマグネシウムの物質循環を知る上で重要な堆積物と水の化学反応における同位体分別の知見を得るために,昨年度参加した大型国際研究計画IODPExp.317で得られた間隙水試料のマグネシウム同位体分析を行った.試料はニュージーランド南島沖の陸棚と陸棚斜面のボーリング掘削で得られたものであるが,世界初の陸棚での大規模な掘削に成功したし,1000mを超えるコアを二地点から得た.ここから陸棚の堆積物中でのマグネシウム収支に関わる反応に関して新しい成果が期待される.現在までに,堆積物の上部と下部ではマグネシウムの除去プロセスが異なることが示唆されている.本研究成果は2010年度古海洋シンポジウムで発表済みで,このほかにも2011年度地球惑星科学連合大会で発表予定である. 現在は質量分析計内部での質量分別効果を補正する新しい手法の開発にも取り組んでいるが,これは復元した水温の確実性を向上させるにも必要不可欠で,また同位体分別過程のより詳細な議論が可能となる.1月には2011 European Winter Conference on Plasma Spectrochemistryに参加し,世界でも屈指の規模を誇るICP(誘導結合プラズマ分析法)の学会で,一線級の分析化学者と直接討論しコミュニケーションを行った.分析手法の開発では短期安定性ではこれまでの分析手法をしのぐ結果を得ている.
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] Small metabolic carbon contribution to shell carbonates of cultured freshwater pearl mussel Hyriopsis sp.2010
Author(s)
Yoshimura, T., Izumida, H., Suzuki, A., Ishimura, T., Nakashima, R., Kawahata, H
Organizer
2nd International Screlochronology Conference
Place of Presentation
Mainz, Germany
Year and Date
20100725-20100728