2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳内酸化ストレス疾患に対する水素分子の神経保護作用
Project/Area Number |
10J03325
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤田 慶大 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水素分子 / 神経変性疾患 / パーキンソン病 / MPTP / 酸化ストレス疾患 |
Research Abstract |
研究概要:本研究は、パーキンソン病モデルマウスとして汎用されるMPTP (1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine)モデルを使用し、酸化ストレス疾患の一つであるパーキンソン病の病態において水素がどのようにして神経保護作用をもつのか、分子レベルで明らかにすることを目的とする。本モデルマウスに対し、飽和水素含有水(水素水)を前もって飲用することによって神経細胞の脱落がおよそ70%から40%に改善され、脳内グリア細胞の形態学的変化を伴う顕著な活性化が抑制されることが明らかになった。また、水素水飲用による神経保護作用はMPTP投与2日後ですでに認められたのに対し、グリア細胞の活性化については、顕著な抑制作用を示すことはなかった。さらに、水素水の神経保護作用は、7日間の継続的な飲水期間を必要とすること、その作用は3日程度しか持続性を持たないことが明らかになった。MPTP投与24時間後に水素水飲用群においてのみheat shock protein 70 (Hsp70)発現増加が見られたことから、水素によるMPTP耐性の分子基盤として、線条体におけるHsp70の発現増加が明らかとなった。 本研究の意義と重要性:当初、水素含有水による神経保護作用は、抗酸化酵素群を誘導する転写因子の一つであるNrf2によるものだと考えていた。ところがNrf2を良好に誘導する細胞として知られるアストロサイトの活性化が、水素水の神経保護作用が認められる時間帯より後でしか見られないことや、神経変性に関与するミクログリアの活性化にも影響がなかったことを踏まえると、神経細胞自身でNrf2と異なる何らかの変化が保護作用に繋がったと考えられる。そこで、神経保護作用をもつ様々な分子の中でHsp70に注目した。本研究は、水素の神経保護作用には、水素の抗酸化作用に加え、Hsp70発現という全く新規のメカニズムが関与することを示唆し、水素による神経保護作用のメカニズム解明に大いに貢献すると考えられる。
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Research Products
(3 results)