2010 Fiscal Year Annual Research Report
歪直交多項式のスペクトル変形理論の構築による離散可積分系の導出とその応用
Project/Area Number |
10J03343
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
三木 啓司 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 歪直交多項式 / 離散可積分系 / スペクトル変形 / 固有値問題 / 特殊関数 |
Research Abstract |
本研究の主目的は、「歪直交多項式を他分野へと応用していく」ことにある。そのための足掛かりとして1年目となる平成22年度の研究計画は、「歪直交多項式のスペクトル変形理論の構築」と「超幾何級数表示を持つ歪直交多項式の漸近挙動とそのランダム行列への応用」を行うこととしていた。実際の研究の実施状況については、まず「歪直交多項式のスペクトル変形理論の構築」については、当初の予定通り歪直交多項式のスペクトル変形理論の構築に成功し、逆変換を導出することに成功した。さらには、このスペクトル変形理論がランダム行列の理論で中核をなしている核関数とも関係していることが明らかになった。また、この結果から2年目の目標にもしていた対応する離散可積分系の導出についても、通常考えられる1+1次元の形式のものだけではなく、多成分拡張とも言える2+1次元の形式のものについても得ることができた。これらの結果については現在、何件か口頭発表を行い論文についても投稿する準備を行っている。次に、「超幾何級数表示を持つ歪直交多項式の漸近挙動とそのランダム行列への応用」について、1年目で得られた結果について述べる。反対称内積にとある対称性を課すことにより、歪直交多項式はある関係式を満足することが明らかになった。このとき、歪直交多項式が古典直交多項式の中で最も一般的であるAskey-Wilson多項式と関係していることが明らかになった。ランダム行列の理論とも深く関係する非対称単純排他過程(ASEP)の理論でAskey-Wilson多項式が現れるという事実から、この結果がランダム行列へと実際に応用されることが期待できる。また、意外な副産物として、このクラスの歪直交多項式がシンプレクティックリー群Sp(n)の表現行列の固有値問題の固有関数になっていることも明らかになり、歪直交多項式の他分野への応用がさらに期待できるものとなった。これらの結果については、現在何件か発表を行い、報告集も提出した。
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Research Products
(9 results)