2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J03355
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 康太 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | heat shock protein / 植物二次代謝産物 / zerumbone / タンパク質品質管理機構 / 変性ストレス / 抗炎症作用 / 分子生物学 / xenohormesis |
Research Abstract |
これまでに、ZERが無数の生体タンパク質と非特異的に結合することを見出している。このようなタンパク質修飾は、生体に対する一種のストレスであると考えられる。一般的に、生体が変性ストレスに暴露されると、heat shock response(HSR)が誘導され、変性タンパク質の修復因子である分子シャペロンの発現が増加する。そこで本研究では、ZERにより非特異的に修飾されたタンパク質が、HSRを誘導する可能性を想定した。マウス肝臓がん細胞hepa1c1c7に対してZERを投与すると、誘導型分子シャペロンであるHSP70及びHSP40の発現が顕著に増加した。また、ZER修飾タンパク質が構成型分子シャペロンであるHSP90と結合することを免疫共沈降法により証明した。さらに、ZERのHSP70誘導活性は、HSR誘導に重要な転写因子heat shock factor 1のノックダウンにより有意に減弱した。ZERは、線虫C. elegans及びSDラット肝臓においてもHSPs発現を経口投与により誘導した。さらに、本物質の前処理により、hepa1c1c7及びC. elegansの熱ショック後の死亡率が顕著に抑制されたことから、耐変性ストレス能の強化が認められた。最後に、他の植物成分のHSP70誘導能について幅広く評価した。試験したほぼ全ての植物一次代謝産物が不活性であったのに対し、α-humuleneやphenethyl isothiocyanateなどの植物二次代謝産物において強い活性が認められた。疎水性や求電子性など、タンパク質との相互作用に重要な性質を有する化合物がHSP70を誘導したことは興味深い。HSRは、抗炎症や寿命延長作用など、様々な生理機能に関与することが報告されており、ZERが有する種々の生理活性の発現機構に対する関与について、今後検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的として掲げていたZER結合タンパク質の検出及び同定に関しては、概ね取り組むことができた。特に、機能性発現に重要と考えられる細胞内シグナル伝達分子28種をピックアップし、それらに対する結合能を系統化できた成果は高く評価できる。残念ながら、現在、本物質の活性発現に重要な標的分子は未同定ではあるが、結果として、ZERの非特異的結合性の意義を問う展開となっており、本研究は良い意味で当初の計画から若干逸脱してきている。これまでの標的分子研究とは異なり、様々なタンパク質に対して非特異的に結合することでタンパク質品質管理機構を活性化させるという、独創的且つ新規性の高い研究結果を得ることができた。また、ZERのみならず植物成分について幅広く本活性を検証できたことも評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度における研究により、ZERがHSRを誘導することが明らかとなった。近年、HSRが抗炎症、抗小胞体ストレス、抗糖尿病、寿命延長作用など、様々な生理機能に関与することが報告されている。そのため、今後は、ZERの有する種々の生理機能の発現機構に対するHSRの関与について検証していく予定である。 マウス肝臓がん細胞hepa1c1c7に対してZERを投与すると細胞内に結合タンパク質が生成するが、細胞を洗浄し、培地からZERを除去した後、さらに培養を続けると、細胞内結合タンパク質が経時的に減少することが明らかとなった。現在、この現象について、プロテアソームやリソソームなどのタンパク質分解系の関与を想定している。これらの分解系は、分子シャペロンと協調的に機能し、タンパク質品質管理機構において重要な役割を担っている。ZERがタンパク質分解系を活性化させることを証明できれば、本物質の新たな生理活性の発見につながるだけでなく、食品機能性研究分野に新たな視点を提示できるという点でも意義深い。
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Research Products
(16 results)