2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J03439
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
國枝 正 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 細胞内輸送 / 細胞壁 / シロイヌナズナ / 種子形成 / 種皮 / ムシレージ / 花茎支持 / ペクチン |
Research Abstract |
移動能力をもたない植物は,生育環境に適応するための防御構造として細胞壁を発達させてきた.細胞壁形成の詳細な分子機構を明らかにすることは,植物の生存戦略を理解する上で欠かせない.本研究は,モデル植物であるシロイヌナズナの種子に特徴的な細胞壁構造に着目し,細胞壁構成成分が細胞外へ分泌されるための細胞内輸送機構の解明を目的としている. シロイヌナズナの種皮細胞は,一次細胞壁と細胞膜の間に特殊な細胞壁構造"ムシレージ"を大量に蓄積する特徴をもつ.吸水処理によって膨張したムシレージは,一次細胞壁を突き破って放出されることで,種子の周りにゲル状のマトリックスを形成する.これまでにムシレージの放出異常を示す細胞内輸送関連因子を同定した.本年度は,この輸送関連因子について欠損変異体の植物形態に着目した解析を行った. 細胞内輸送関連因子の変異体は,ムシレージの部分的放出という異常を示す.この異常は,ムシレージの主成分であるペクチンの可溶化処理により劇的に改善した.この結果は,輸送関連因子がペクチンの性質変化に関与することを示唆する.一方,変異体では植物体の地上部組織でユニークな異常を引き起こすことを見出した.変異体の地上部組織はやや矮化傾向を示すにも関わらず,野生型よりも花茎が倒伏し易くなっていた.これは,変異体の花茎が,地上部組織を支えるには物理的強度不足であることを示している.しかしながら,変異体では花茎支持組織には顕著な形態異常は観察できていない.所属研究室の先行研究によって,花茎におけるペクチンの性質変化が支持強度に重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.すなわち,変異体における花茎倒伏異常が,ペクチンの性質変化が原因である可能性が考えられた. 本年度の結果から,細胞壁形成における細胞内輸送因子の機能がペクチンの性質変化と密接に関与することを明らかにできた.
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Research Products
(4 results)