2010 Fiscal Year Annual Research Report
鉄系高温超伝導体のドーピング制御と輸送現象・光学応答測定
Project/Area Number |
10J03443
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 茂之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 鉄系高温超伝導体 / 結晶合成 / 輸送現象 |
Research Abstract |
鉄系高温超伝導体の母物質は磁気・構造相転移を起こし超伝導を示さないが、元素置換(ドーピング)や圧力印加によってこの相転移は抑制され、超伝導が発現する。我々はLnFeAsO_<1-y>(Ln:ランタノイド元素)の結晶を合成し、その電気抵抗率、ホール係数、磁気抵抗等の輸送現象測定を行うことで、ドーピング量によってキャリアの濃度や移動度にどのような変化がもたらされ、それらが超伝導とどのように関連しているかを調べた。Lnをイオン半径の大きなLaからCe、Pr、Ndと小さくしていくと格子定数は小さくなり、超伝導臨界温度T_cは28Kから52Kまで上昇する。これと相関して、低温における電気抵抗率をT^nで表したときのベキnはT_cの低いLaFeAsO_<1-y>ではn~2であるが、T_cの高いNdFeAsO_<1-y>ではn~1に近づくことがわかった。また、LaFeAsO_<1-y>では比較的大きな磁気抵抗が観測されたが、NdFeAsO_<1-y>では非常に小さくなった。LnがCeやPrの場合はLaとNdの中間的な振る舞いが観測され、両者の間をLnの大きさ(格子定数)の変化に従って連続的に移り変わることがわかった。通常、キャリアの移動度が高いほど磁気抵抗は大きくなるので、磁気抵抗の小さいNdFeAsO_<1-y>ではLaFeAsO_<1-y>に比べてキャリアの移動度が低い、すなわちキャリアはより強い散乱を受けていると考えられる。したがって、LnFeAsO_<1-y>においてはキャリア散乱が強いほどT_cが高くなるということが示唆される。またこのように電気抵抗率のベキを変化させるような散乱機構の候補としては、フェルミ面同士のネスティングによるスピン揺らぎ等が挙げられる。本研究は、常伝導状態のキャリアの散乱強度と超伝導臨界温度の間に相関があることを見出したという点で大変重要である。
|