2012 Fiscal Year Annual Research Report
衛星計測・排出量推計・化学物質輸送モデルを統合した次世代型大気環境研究手法の確立
Project/Area Number |
10J03510
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
板橋 秀一 九州大学, 応用力学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大気汚染物質 / 化学物質輸送モデル / 衛星計測 / 排出量推計 / 東アジア / HDDM |
Research Abstract |
東アジアの近年の急速な経済発展に伴い人為起源大気汚染物質の排出量は増加してきており,2007年春季に我が国では光化学スモッグ注意報が広域に発令されるなど社会的に大きな影響を与えた.大気中の化学物質の挙動や影響を理解するには,発生・輸送・反応・沈着過程を包括的に表現できる化学物質輸送モデルを用いた研究が1つの大きな有効手段である が,モデルには依然として多くの不確実性がある.モデルによる計算値と観測値との整合性を高めるデータ同化では,両者を融合させてより高い精度の数値シミュレーションが可能となる.本研究では前駆気体に非線形に反応するO_3に着目をする.そのため,非線形化学反応系に適用できうるDDM感度解析法とGreen関数最適法を融合した新しい手法を提案し,従来は独立に行われてきた排出量推計,モデル解析,衛星による観測結果をデータ同化手法で統合した次世代の大気環境研究手法を確立することが目的である. 最終年度となる本年度は,DDM感度解析法を適応してSO_2を前駆気体とする硫酸塩粒子の発生源寄与解析を行い,さらに衛星観測結果を用いることで,中国のSO_2排出量は2009年には2004年レベルまで減少していることを推定した.非線形性の化学反応過程を伴うO_3についてもDDMをHDDM(Higher-order DDM)に拡張することで,前駆気体排出量に対する感度を考慮できるように応用した.2007年春季の越境大気汚染の事例およびO_3の発生源寄与の季節変動についてHDDMを用いた研究を進めた.DDMとGreen関数を融合させた新しいデータ同化手法についても東アジア域の大気環境問題への理解を進める上で大変有用な結果を得た.03生成に関わる大きな不確実性を有する化学反応係数と前駆気体の排出量を同時に逆推定することで,夏季のO_3濃度の再現性を向上させることが可能となった.
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Research Products
(12 results)