2010 Fiscal Year Annual Research Report
ピリジニウム塩型カチオン性中間体を用いる高官能基選択的な有機合成反応の開発
Project/Area Number |
10J03573
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保 大空 大阪大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ピリジニウム塩 / カチオン性中間体 / アセタール / 炭素-炭素結合形成反応 / 官能基選択的反応 / オキソニウムイオン / 求核置換 |
Research Abstract |
オキソニウムイオンは、炭素カチオンを隣接エーテル酸素原子の孤立電子対により安定化したカチオン種であり、そのものを用いた炭素求核種やヘテロ求核種との反応は医薬品や生理活性物質の合成に利用されるため、極めて重要な化学種として知られている。 通常アセタールやその誘導体のエーテル酸素をルイス酸により活性化することでオキソニウムイオンを発生させるが、非常に短寿命なため求核種の存在下に行うのが定法とされている。それ故、酸に不安定な官能基を持つ化合物や求核種存在下では適用できないという潜在的な官能基選択性の問題を有していた。一方、我々はアセタールに、TESOTfとピリジン型塩基である2,4,6-コリジンを作用させると、弱塩基性、0℃という非常に緩和な条件で、ピリジニウム塩型のカチオン性中間体が発生することを見出している。本中間体は、オキソニウムイオン様の求電子性を示し、発生させた後に改めて種々の求核種を作用させることで、対応する求核置換体を高収率で与える。さらに、酸に不安定な化合物も適用可能で、従来にない高い官能基選択性を有している。ところで、アセタールへの炭素求核種導入反応は、重要な炭素-炭素結合形成の一つであるが、通常ルイス酸により触媒されるため、酸に不安定な官能基を持つ化合物や求核種には適用できないという潜在的な官能基選択性の問題を有している。そのため従来にない官能基選択的なアセタールへの炭素求核種導入反応の開発は極めて意義深い。本年度は、ピリジニウム塩型カチオン性中間体を利用する、高官能基選択的な炭素-炭素結合形成反応の開発を行った。我々はピリジニウム塩型中間体に、エナミン、シリルエノールエーテル、シアニド、イソシアニドを作用させることにより、従来にない緩和で高官能基選択的な、アセタールへの炭素求核種導入反応を開発することに成功した。
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