Research Abstract |
カーボンナノチューブ(CNTs)は炭素六員環がチューブ状に結合したものである.機械的特性や化学的安定性に優れ,生体適合性が高いことから生体材料への応用が期待されている.我々はこれまでに,CNTs特有の立体構造に着目し,3次元細胞培養担体の1つであるコラーゲンスポンジの表面をCNTsでコートしたCNTコートスポンジを開発した.本研究では,CNTコートスポンジの骨再生への応用の可能性を検討するため,1.CNTコートスポンジ内部への細胞接着機構の詳細な観察,2.初代骨芽細胞の分化への影響の評価,3.同スポンジに対する周囲組織の反応の観察を行った. その結果,培養3,7日後においてCNTコートスポンジ中心部に付着した細胞数は未処理のスポンジと比較して有意に高く,細胞播種直後においてはCNTコートスポンジに付着した細胞は早期に伸展することが明らかになった.また,ラット頭蓋冠より採取した初代骨芽細胞を培養したところ,CNTコートスポンジでは未処理のスポンジより短期間で分化することが明らかになった.周囲組織の反応については,皮下組織において,CNTコートスポンジ周囲の炎症反応は軽微であり,骨随腔内ではCNTsと直接接して骨形成が観察された.CNTコートスポンジ周囲の骨形成量は28,56日後において未処理のスポンジと比較して有意に高かった。さらに,初代培養骨芽細胞を1日培養した各スポンジを,ラット皮下に埋入したところ,28日後において,CNTコートスポンジのポアを埋めるように明瞭な骨形成が観察された.一方未処理のスポンジでは,骨形成の前にスポンジが押しつぶされ,骨形成はほとんど観察されなかった. 以上より、CNTコートスポンジでは中心部にまで細胞が付着し,骨芽細胞の分化を促進する上,高い生体適合性を示し,骨再生への応用が期待できると考えられた.
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