2010 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム単核錯体の構造制御に基づく高機能酸素生成触媒の開発
Project/Area Number |
10J03656
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 将己 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人工光合成 / 酸素発生 / ルテニウム錯体 / セリウム / DFT計算 |
Research Abstract |
本課題では、高活性酸素発生触媒の創製を目的とし、触媒活性サイト近傍の構造と触媒活性との相関について詳細に比較検討を行っている。本年度は、ルテニウム単核錯体による酸素発生反応において、触媒活性部位であるルテニウムへと配位している三座配位子を変化させることにより、その酸素発生メカニズムが大きく変化することを初めて見出した。具体的には、三座配位子を変化させることでルテニウム中心の電子状態を系統的に変化させた場合、その触媒反応の鍵となる段階が、触媒1分子による反応から触媒2分子による反応へと変化するということが判明した。この事実は、配位子で電子状態をコントロールすることにより、触媒反応を自在にコントロールできるという新たな可能性を示すものであり、今後詳細に検討することで高活性触媒の開発へとつながることが期待できる。 また、この配位子の系統変化による触媒活性への影響に加え、酸化剤であるセリウム(IV)の特異的な反応性が重要な役割を果たしていることを世界に先駆けて見出した。ルテニウム触媒による酸素発生において、セリウム(IV)以外の酸化剤を用いた場合に反応は全く進行しない。DFT計算を用いてこの詳細について検討した結果、セリウム(IV)に配位した水酸化物イオンがラジカル的な反応性を帯びているという、特殊な性質が酸素発生に大きな役割を果たしていることを提案した。これまで30年間酸素発生の研究において一電子酸化剤としてセリウム(IV)が用いられてきたが、セリウム(IV)の反応性に着目したこの発見は30年間の酸素発生の研究の歴史に大きな疑問を投げかける、非常に重大な発見であり、その意義は大きい。
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