2011 Fiscal Year Annual Research Report
ルテニウム単核錯体の構造制御に基づく高機能酸素生成触媒の開発
Project/Area Number |
10J03656
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 将己 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 人工光合成 / 酸素発生 / ルテニウム錯体 / セリウム / DFT計算 |
Research Abstract |
本課題では、高活性酸素発生触媒の創製を目的とし、触媒活性サイト近傍の構造と触媒活性との相関について詳細に比較検討を行っている。特に、酵素の触媒メカニズムに倣い、配位子上に機能性の置換基を導入することで金属中心との共同効果による触媒の高機能化・高活性化を図り、酵素のような高活性触媒を開発することを最終目的としている。さらに前年度、ルテニウム錯体による酸素発生反応において酸化剤であるセリウム(IV)の特殊な反応性が重要な役割を果たしているということも見出している。そこで本年度は、セリウム(IV)へと配位可能なスルホ基をルテニウム触媒上に導入し、酵素反応のようにセリウム(IV)を捕捉し協奏的に酸素発生を進行させる触媒の開発を行った。 スルホ基を導入した新規ルテニウム錯体の合成、および結晶構造解析に成功し、この錯体を用いて酸素発生触媒反応の検討を行った。その結果、確かにスルホ基を導入した錯体においてその触媒活性を大きく向上させることに成功した。さらに、ルテニウム錯体上のスルホ基がセリウムへと配位した錯体の単離・結晶構造解析にも成功し、確かにスルホ基がセリウムを捕捉する「腕」として働いていることを明確に証明した。 この触媒は、酸素発生触媒において初めての「能動的に酸化剤を捕捉し、触媒反応を有利に進行させる『人工酵素』」であり、このような触媒を世界に先駆けて開発した重要度は大きい。さらに今後、酸化剤による熱的な反応であったこの酸素発生系を光化学的な人工光合成へと応用することで、高効率で水を分解し酸素とエネルギーを生成するシステムの開発へとつながることが期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では、酸素発生触媒の活性サイト近傍の構造を制御することで効率的に酸素発生を進行させる「人工酵素」の創製を目的としているが、本年度、この「人工酵素」の創製を達成したばかりか、機能性置換基であるスルホ基がセリウム(IV)を捕捉している中間体の単離についても世界で初めて成功し、この触媒が「人工酵素」として働いていることを明確にした。この結果は当初の計画をも上回る大きな成果であるということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、エネルギー問題や環境問題を背景に、太陽光エネルギーを貯蔵する「人工光合成」システムの開発が求められている。本研究では酸化剤としてセリウム(IV)を用い、その性質を利用して「人工酵素」の設計を行っているが、今後は酸化剤による熱反応ではなく光反応で酸素発生を行うことが求められる。そこで、セリウム(IV)を電子伝達剤として少量用い、別途光増感剤などを利用することで、「人工酵素」の性質を生かしながらも「人工光合成」を指向した高効率の光触媒酸素発生システムの構築を目指している。
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