Research Abstract |
本年は,実効的閉集合(計算可能実連続関数の零点集合)の計算不可能性構造,幾何学的構造,測度論的性質,学習理論の間の相互関係に関する研究を行った. 1. 位相空間上の極限学習の力学的モデルに関する研究を行い,その直観主義論理(ハイティング代数)的帰結に関して調査を行った.この方法論の下で,排中律,二重否定除去,ド・モルガンの法則の算術的階層の分析を行い,これによって不連続な実函数の分類が可能であることを示した.この観点は,実函数論や記述集合論においてよく知られているベール第一類関数の分類法である振動階数・収束階数・分離階数の超限階層などとは真に異なる本質的に新しい観点を与えている.加えて,既知の超限階層に比べ,ディリクレの函数を初めとする,解析学の著名な反例が,不連続函数の階層の如何なる位置に停むかに対して,より明確な知見を与えている.これらの一連の結巣は,直観主義論理の研究が,実解析などの"古典論理上のZFC集合論に基づく通常の数学"にさえ応用可能であることを明らかにするものである. 2. 不連続函数の持つ"計算能力"に対する,位相空間論的分析を与えた.まず「レイヤー稠密数」という計算位相不変量を導入し,これによって実函数の"計算能力"の分類を行った.この観点の下で,ポパー的学習可能な不連続函数(科学哲学におけるカール・ポパーの反証可能性原理に基づく仮説構築によって極限的に習得可能な実函数)の"計算能力"の限界を導いた. 3. ランダムネスの理論への応用として,実数の集合の測度論的性質と整数列のランダム性に関する未知の繋がりを発見した.1919年,ポレルはルベーグ測度零であるよりも更に強い性質として,強零性という概念を導入している.筆者は,強零性概念を実効化し,これがコルモゴロフ複雑性の増大度によって捉えられることを発見した.
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