2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノゲル架橋ハイドロゲルの設計とタンパク質デリバリーへの応用
Project/Area Number |
10J03768
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
下田 麻子 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ナノゲル / タンパク質デリバリー / 架橋 / ハイドロゲル / 骨再生 |
Research Abstract |
我々は親水性多糖であるプルランに疎水性基であるコレステロールを部分的に置換したコレステロール置換プルラン;CHPが、水中で自己組織的に会合し約30nmのナノゲルを形成することを見出している。ナノゲルはタンパク質を内部に取り込み、分子シャペロン効果により活性を保持したまま放出することができるのが特徴である。本研究では、ナノゲルに重合性基(アクリロイル基)を修飾させた反応性ナノゲルに注目し、これと親水性ポリマーとを架橋させることでナノゲル集積ハイドロゲルの作製と機能評価を行った。この微粒子はナノゲルが生分解性を有する架橋により数十から数百のナノゲルが集積した構造をとっているのが特徴である。また、ナノゲルの濃度を高濃度にすることでマクロゲルを形成することから、再生医療の足場材料としての応用が期待できる(Asako Shimoda et al., Colloids Surf B Biointerfaces. in press)。 本年度はまず、ナノゲル架橋マクロゲルの作製と機能評価を行った。ナノゲルのアクリロイル基の導入率及び濃度に伴いゲル強度を容易に調節可能であり、ナノゲルと複合化したタンパク質はナノゲルに内包されたままマクロゲルから放出された。また、血清含有培地での分解挙動を評価したところ、約10日間かけて徐々に分解することがわかった(Asako Shimoda et al., Macromolecular Research., 20,266-270 (2012))。このマクロゲルを用いて、インプラント治療時の骨の高さ・厚みが不足している場合に用いる骨再生を促す人工膜(GBR;guided bone regeneration)としての応用を試みた。ラット頭蓋骨に作製した直径5mmの欠損部に直径6mm、厚さ0.4mmのマクロゲルを被覆し、4週間後にμCTにて得られた骨の断層画像の解析を行った。コントロール及び市販のGBRメンブレンでは欠損部が残っているのに対し、ナノゲルを用いた場合にはほぼ新生骨が形成されているのが観察された。これより、ナノゲル架橋マクロゲルは骨再生の足場材料として有用であることが示唆された(Takayuki Miyahara et al., J Tissue Eng Regen Med,. in press.)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度はナノゲル架橋ハイドロゲルを、ナノゲル濃度を変えることにより微粒子とマクロゲルそれぞれを作製しインジェクタブル材料と再生医療の足場材料としての応用を試みた。上記記載以外にも様々な共同研究を行い、有用な結果が得られた。本材料は今後もバイオマテリアルへの応用が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
組織再生誘導には仮の足場及び細胞増殖に必要な生体シグナル因子の両者が必要となる。本研究で作製したナノゲル架橋マクロゲルはタンパク質を容易に内包できると共に、再生医療の足場材料として有用であることを示している。この際、内包する生体シグナル因子を複数にすることでより顕著な組織再生が期待できる。個々のナノゲルに様々なシグナル因子を内包することは容易であるが、各シグナル因子の放出挙動を制御するにはマクロゲルの構造の設計が必要となる。そこでマクロゲルを多層に積み上げ、外側から順にナノゲル及び内包物を放出するような新規材料の設計及び機能評価を行う。さらに、今年度はカルボキシル基を有するアニオン性ナノゲルの合成に成功しており、今後はこれを用いた機能性分子修飾ナノゲルの作製なども行う予定である。
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Research Products
(11 results)