2010 Fiscal Year Annual Research Report
過酸化水素によるTRPM2チャネル感作の分子基盤と免疫応答への寄与の解明
Project/Area Number |
10J03850
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
加塩 麻紀子 総合研究大学院大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | TRPM2 / 過酸化水素 / 体温 |
Research Abstract |
Transient Receptor Potential Melastatin 2 (TRPM2)は体温以上の温度で活性化するイオンチャネルである。申請者は、TRPM2の温度感受性が過酸化水素処置により劇的に増大する現象を新規に見出した。TRPM2は、脳、腎臓、膵臓、免疫細胞など温度変化の小さい深部組織に発現するため、TRPM2は温度に対する"感受性"を変化させることで生理機能を発揮し、過酸化水素がそのレギュレーターとして働くと考えられる。TRPM2を発現する免疫細胞のうち、貪食細胞は感染時の異物貪食に伴い過酸化水素を産生するため、過酸化水素によるTRPM2温度感受性調節がその生理機能に深く関わる可能性がある。感染にはしばしば発熱を伴うが、その発熱が免疫力を高めることは古くから知られる現象である。TRPM2活性は温度上昇により増大するため、感染と発熱の情報がTRPM2に集約され"発熱による免疫の活性化"が起こる、つまりTRPM2が発熱による免疫制御のコア分子として機能するという仮説を立てた。 異所性発現系を用いた検討により、過酸化水素によるTRPM2の温度感受性の増大は、TRPM2の活性化温度閾値が低温側にシフトした結果であることを明らかにした。また現在は、野生型およびTRPM2欠損マウスから単離した腹腔内マクロファージをモデルとし、サイトカイン遊離や貪食といった生理機能を検討するin vitro実験等を行い、免疫機能にTRPM2依存性の調節機構が存在することを確認した。 本研究から、TRPM2が生体内のレドックスシグナルによる調節を受けること、またその調節機構には体温が深くかかわることが明らかとなった。本研究結果は、免疫研究に"体温"を鍵とした新たなアプローチを提供するものと考えられる。
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