2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10J03968
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
前田 舟子 国立大学法人琉球大学, 法文学部, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 琉球 / 久米村 / 官生 / 国子監 / 漂流・漂着 / 明朝 / 清朝 / 東アジア |
Research Abstract |
今年度は、沖縄県那覇市歴史博物館に所蔵されている未刊行の家譜資料の中から、特に官生として中国(明清両朝)の国子監へ赴いた久米村人の家譜を収集した。また、同博物館に所蔵されている尚家文書の中から、久米村人が関与したとされる外交関係史料や業務日誌といった史料を収集し、内容の分析を行った。これにより、官生はその総数が非常に少ないがために、何ら成果を残していないと評されていた従来の見解に対し、それを刷新する新たな見解を導き出すことができた。それは、国内外のさまざまな問題について王府側が討議した際に記録した「僉議」の中に、王府側が対中関係についてたびたび官生に意見を伺い、それを参照していたという内容の記述によるものである。つまり、該文書によって、王府側が官生らの意見を重要視していたことが明らかになったのである。 他に、法政大学沖縄文化研究所へ赴いて、楚南家文書に収録されている久米村官生の個人所蔵の書籍を閲覧・収集した。そこには、沖縄には残存しない官生個人の所蔵印が押印された書籍が含まれていた。 夏には中国浙江省・江蘇省へ赴いて、両省における琉球関係史跡を調査し、1冊の報告書にまとめた。秋から冬にかけては、台湾および香港・澳門・広東の沿海地区を廻り、現地に漂流・漂着した久米村人の足跡を追った。その成果については、将来的には学会などで報告し、特に漂着地である現地の研究者に広く認知してもらいたいと考えている。 こうした個人の研究活動の合間を縫って、沖縄県内だけでなく日本本土の学会へも積極的に参加した。夏に箱根で実施された明清史合宿に参加し、沖縄県内では知り合うことのできない多くの研究者や学生らと意見を交わした。秋には、名古屋大学で開催された東アジア近代史学会に参加し、東アジア史において日本の研究者がどのように琉球・沖縄を捉えているのか知ることができた。冬には、堺市博物館で開催された「16~17世紀の東アジア海域」に参加した。
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